ウェルネスコラム「アメリカで承認されたがん治療法「CAR-T療法」について」

ウェルネスコラム

理事長ブログ

アメリカで承認されたがん治療法「CAR-T療法」について

T細胞を遺伝子操作するCAR-T療法

アメリカで新しく承認されたCAR-T療法には、「遺伝子操作」の技術が応用されています。

患者さんのT細胞を体の外に採り出し、CD19という物質を標的として攻撃するように遺伝子操作し、培養して体内に戻すのです。

こじつければ「遺伝子を応用した治療」と言えなくもありませんが、あくまで免疫細胞療法の派生型です。

誤解する人もいるようなので、遺伝子とがん治療の関係を少し整理しておきましょう。

遺伝子変異はがんの発症に深く関わっています。

そこで、「がんは免疫の病気」と言うのに似て、「がんは遺伝子の病気」と言われることもあります。たしかに理屈上、間違いではありません。

ゲノム医療は「遺伝子治療」とは無関係

しかし現在、免疫治療は実用化されていますが、遺伝子治療は確立していません。

厚労省が「ゲノム医療」の推進をうたっているので、遺伝子そのものは注目されています。

ただし、ゲノム医療の主眼は、遺伝子検査で薬の適性を調べ、がんを効率よく治療していこうということです。これを遺伝子治療とは言いません。

患者さんの体内に正常な遺伝子を入れて、がん化した細胞の修復を試みる遺伝子治療は、しばらく前に、全国の大学病院などでさかんに治験が繰り返されていました。

その結果、ほとんど成果は得られなかったと結論が出ています。

薬でがん細胞を狙い撃ちすることさえ難しいのに、都合よく遺伝子を取り込んでもらおうという発想に無理があったのです。

遺伝子を操作してがん細胞を作るなら簡単ですが、がん細胞を正常な細胞に戻したなどという話は聞いたこともありません。

そういう荒唐無稽な話は、タイムマシンでも作らないかぎり実現できないでしょう。

遺伝子操作したT細胞は免疫細胞療法の主流になるか?

さて、CAR-T療法は、適応がB細胞型の悪性リンパ腫に限られています。

CAR-T細胞が標的にするCD19という物質は、B細胞上に普通に生えているものです。それを狙うので、がん化したB細胞と一緒に、正常なB細胞も殺し尽くします。ですから、これ以外のがんには使えません。

感染症から身を守るのに欠かせないB細胞が全滅するので、当然、大きな副作用のリスクもあります。

T細胞は、NK細胞のようにがん細胞そのものを認識して攻撃するわけではありません。

それを使った免疫細胞療法には、自ずと限界があるのです。

では、なぜT細胞が使われるのかといえば、NK細胞より扱いやすいからです。

正常細胞と識別してがん細胞を殺すNK細胞は、標的があれば攻撃するといった単純なしくみではありません。だから遺伝子操作にはなじまないのです。

そもそもNK細胞は、活性化すればどんながん細胞でも攻撃するので、わざわざ遺伝子操作などする意味もありませんが。

【次のページ】新薬の値段をめぐって思うこと

【前のページ】将来の免疫療法の主役は免疫細胞療法へ

一覧へもどる

がんの相談センター

ご相談・資料請求はこちら