ウェルネスコラム「乳がん治療、遺伝子検査で手術不要の患者を判別――国立がん研究センター」

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乳がん治療、遺伝子検査で手術不要の患者を判別――国立がん研究センター

国立がん研究センターは、外科手術をせずに治療できる人を判別できる、遺伝子のDNA配列である遺伝子マーカーを突き止めたと発表しました。

国立がん研究センター東病院の向井博文医師らが研究を進めてきたものです。


乳がんは、がん細胞の特徴から、4タイプに識別されます。

このうち、向井医師らは乳がん患者の10~15%を占める、ホルモン療法の効果がないタイプに着目しました。

そのタイプのがん患部の一部を切り取って、ある遺伝子の活性度を調べます。

その後患者に分子標的薬と抗がん剤の投与を実施し、患者のがん患部の遺伝子が以前より活性化していれば手術が必要で、遺伝子が活性化していなければ手術は不要になるということを突き止めました。


向井医師は4年後の実用化を目指しており、「手法を応用すれば、ほかのタイプの乳がんや別の部位のがんにも適用していくことができるようになります」と話をしています。


向井医師らは、別の臨床試験で同タイプの患者に対し、HER2陽性に効くとされる分子標的薬と抗がん剤などの投与を実施。手術で細胞を調べたところ、半数の患者でがんが完全に消失していました。がんが消えた理由を科学的に立証する過程で、人間が持つ全遺伝子約23000から関連する遺伝子「HSD17B4」を特定。この遺伝子が活性化していない人はがんが消失したことも突き止めたのです。


臨床試験では、この遺伝子をマーカーとして用い、手術が不要になる患者を特定します。今月から同病院など全国の医療機関30~40カ所でステージ1~3の乳がん患者200人を登録し、遺伝子検査を実施。分子標的薬などを3~6カ月投与し、1カ月間の放射線治療を行ないます。その後、がんが消えた人について、この遺伝子が活性化していたかどうかを調べ、マーカーによる選別の有効性を検証します。詳細は、9月28日から横浜市で開かれる日本癌学会学術総会で発表される予定です。


HER2陽性に効く薬剤とは、ハーセプチンのことです。ハーセプチンと抗がん剤を併用するのは、理にかなっていません。なぜならハーセプチンは免疫細胞を温存する薬剤で、抗がん剤は免疫細胞をやっつけてしまう薬剤であるため、相殺してしまう可能性があるからです。むしろ、ANK免疫細胞療法とハーセプチンの併用が理想的でしょう。今回の発見はそれとは別に、手術が不要になる乳がんが見つかる可能性があるということです。それは女性にとっての福音となることでしょう。



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