コラム「なぜがんは転移する? そのメカニズムをご紹介」

コラム

2018年01月22日がん治療コラム

なぜがんは転移する? そのメカニズムをご紹介

がんとは、細胞の遺伝子に異常が起きて、細胞の分裂・増殖をコントロールする制御機構のコントロールを受け付けずに増殖した腫瘍のうち、正常な細胞を浸潤して広がったり、他の場所に転移したりするなどの悪性を示すものを指します。

つまり、がんと診断された悪性腫瘍の多くは、転移する可能性があるのです。

本コラムでは、がんが転移するメカニズムや、治療法についてなど、研究されている知見についてご紹介します。

がんの進行の仕組み 再発と転移

がんは発生すると、増殖を続けて大きくなります。その際に、正常な細胞との境目をつくらず浸潤して、正常な細胞を破壊し、あるいは圧迫して臓器を機能不全に陥れます。

この浸潤性が、がんの大きな特徴です。

がんは増殖して大きくなるだけでなく、浸潤して他の細胞や組織を破壊します。

そのため、がんの進行度は、大きさや症状と浸潤・転移の度合いを総合して、ステージ0~Ⅳまでの5段階で表現されます。

がんのステージ0

がん細胞が上皮内にとどまっている状態です。

がんのステージI

腫瘍が少し広がっているものの、筋肉層まででとどまっており、リンパ節に転移はしていません。

がんのステージⅡ

リンパ節に転移はしていませんが、筋肉の層を超えて浸潤しています。もしくは、腫瘍は広がっていないものの、リンパ節に少し転移している状態です。

がんのステージⅢ

腫瘍が筋肉の層を超えて深く浸潤したり、臓器の壁を越えて露出したりしている状態です。また、この段階ではほぼ、リンパ節への転移もみられます。

がんのステージⅣ

がんが臓器の壁を超えて、まわりの主要な血管などに浸潤しているか、もしくは離れた他の臓器へ転移している状態です。

がんの種類によって、ステージの条件は多少変わりますが、大まかに上記のように診断されます。がんは、何も治療しなければ、やがて全身に転移して体中の臓器ががんになるとされています。

そして、ステージⅢまでは手術によってがんを切除し、根治も可能とされていますが、転移が認められるステージⅣになると、どこか一か所を切除しても新たに再発する可能性が高いため、基本的に手術は行ないません。標準治療では、抗がん剤を使った化学療法や放射線を使った放射線治療などの「延命治療」がメインとなります。

つまり、現代の医療で、がんが「根治は難しい」と判断される基準となるのが、転移をしているかいないか、です。

がんがまだ小さくても、転移が確認されればステージⅣとみなされ、根治は難しいと判断されてしまうのです。

また、手術によってがんを切除しきったと思っても、患部に腫瘍マーカーでも特定できないほどわずかにがん細胞が残っていたり、検査でわからなかったもののすでに転移していたために、転移先でがん細胞が増殖を始めてしまったりしたがんを、再発がんと呼びます。再発は転移と同じことなので、やはり発見されればステージⅣになります。

がんの転移のメカニズム

がんはどのように転移するのでしょうか。

そのメカニズムを知るには、転移の種類と経路に着目する必要があります。

・転移の種類

  1. ① 局所転移:原発巣(最初にがんが発生した病巣、原発性とも)付近に転移するものです。
  2. ② 領域転移:局所リンパ節(最初にがんが発生した病巣の周囲のリンパ節)に転移するものです。
  3. ③ 遠隔転移:原発巣より離れた遠隔の部位に転移するものです。

・経路の種類

  1. ① リンパ行性転移:口腔がんや乳がんは、リンパ流に沿って移動して他の臓器に転移することが知られています。
  2. ② 血行性転移:がんは周囲の血管に浸潤して、血流に沿って移動し、転移します。また周囲の正常細胞に指令を出し、血管新生を行って栄養を運び込もうとしますが、このときにできた新しい血管を伝って移動がなされることも多いことがわかっています。
  3. ③ 播種(はしゅ):腹腔や胸腔といった体腔へ漿膜(しょうまく)を突き破って露出した腫瘍から、がん細胞が体腔内に飛び散って他の漿膜面に移植され転移することを指します。胃がんが腹膜を破って腹腔に突き出たりした場合や、卵巣がんが卵管を通ってがん細胞を子宮に運ぶなどが、この経路として知られています。

人の体内には、血管とリンパ節(とリンパ管を合わせてリンパ系ともいいます)がめぐらされており、それぞれ血液とリンパ液を運んでいます。がんは、これらの流れに沿って移動し、別の臓器に転移していくのです。

とはいえ、ほとんどのがん細胞は、血管やリンパ節のなかの免疫系に退治されて、必ず転移が成功するわけではありません。がんの治療は、発生したがんを切除したり小さくしたりして根治を目指すだけでなく、いかに転移を防ぐかが重要になります。

がんを切除したあとに抗がん剤治療を続けるのは、少しでも転移を防ぐことが目的なのです。

ちなみに、転移したがんは、どこで増殖しても原発巣と同じ特徴を持ちます。つまり、大腸がんが肺に転移した場合、大腸がんの特徴を維持したまま増殖します。そのため、肺がんに効果のある抗がん剤を使っても意味はなく、大腸がんに効果のある抗がん剤を使用する必要があります。

肝臓は体中の臓器の中継点になるため、転移性のがんが発生しやすい臓器です。このように、転移されやすい臓器もあるので、検査ではこれらの臓器に注意する必要があります。

肝臓と同じように、多くのがんで転移しやすいのが骨です。骨転移はそれ自体が生命の危機をもたらすものではありませんが、骨をやわらかくして骨折しやすくなってしまうなど、療養生活の質を大きく落とすことにもなりえます。

主治医ががんの治療だけを示す場合は、ネットなどで正しい情報を仕入れ、生活するうえでの注意点や方法を自分で学ぶ必要があるでしょう。

ただし、転移がんのおよそ10%は原発巣がわからない、つまり発見されたときから転移がんの場合があります。その場合は、特定のがんに効果がある治療法ではなく、あらゆるがんに効果がある治療法がとられます。

転移がんはどうやって治療するのか?

転移がんを根治する治療法は、まだ標準治療としては確立していません。転移がんが見つかった時点で、がん細胞はどこに潜んでいるかすべてを検出するのは困難な状況になってしまっており、たとえ見つかったがんをすべて切除しても、いつか再発する可能性が非常に高いのです。

そのため、いかに転移を防ぐかに焦点をあてた治療法の研究が進んでいます。

転移を予防する効果があるANPという成分を使った治療法や、血管新生を阻害する抗がん剤などの薬の開発が試みられていますが、まだ保険適用には至るような治療薬は開発が終わっていません。

参考:https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_451.html

がんの転移が見つかれば、末期がんと告知され、ショックを受ける方も多いでしょう。ただ、ステージⅣのがん患者のすべてが、すぐに亡くなるわけではありません。なかには標準治療に加え、先進医療・自由診療などの治療を受けながら、何年も生存されている方もいます。

もし自分や、父・母など家族に転移が見つかった場合は、治療費だけでなく、そうした経験者の体験談を聞くなど、気持ちを意識したメンタルケアにも留意して、治療方針を決定するといいでしょう。

今後、副作用がほとんどない光免疫療法やANK免疫細胞療法など、免疫細胞を活用した治療法によって、あらゆるがんに対応した治療法が確立すれば、転移がんであっても、根治が可能になっていくであろうことが予想され、期待されています。

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