コラム「がんに免疫が効く?がん治療を始める前に知っておきたい免疫の知識①」

コラム

2018年02月08日がん治療コラム

がんに免疫が効く?がん治療を始める前に知っておきたい免疫の知識①

がんに免疫が効く? がん治療を始める前に知っておきたい免疫の知識

「がんに免疫が効くと聞いたけど、どういうこと?」

「そもそも免疫ってなに?」

手術・抗がん剤・放射線の3大治療に加えて、がんの第4の標準治療とすべきだとの声が高まっている免疫療法。しかし、その実態を知る人は少ないのではないでしょうか。

実は、がん細胞は毎日のように体内で生まれています。
健康な人でも1日に5000個のがん細胞ができているとされ、それらを退治しているのがリンパ球などの免疫細胞なのです。

がん治療においてとても大切な免疫について、その仕組みをご紹介します。

免疫とはどんなもの?

そもそも免疫とはどんなものでしょうか。

免疫は「疫(=病気)」を「免」れると書きます。
つまり、病気にならないように細菌などの微生物やウイルスから体を防御してくれる、生物に本来備わっているシステムのことです。

この免疫の仕組みは、大きく3つの段階に分けられます。

まず、外界と直接接する皮膚や、口腔や眼球などの粘膜、腸壁などで異物を排除する表面防壁です。免疫というと、体内で異物を攻撃する細胞のことをイメージしますが、多くの異物はこの段階で排除されます。

防御方法はこの段階から多様で、体毛や体液などで病原菌の侵入を防いだり、共生している腸内細菌が病原菌の繁殖を防いだりする働きをするなど、機械的・化学的・生物学的に防御するシステムになっています。

ちなみに、異物が体内に侵入する主な経路である腸内には、全身のおよそ7割の免疫細胞が集まっています!

免疫には自然免疫と獲得免疫があります

表面防壁で止められず、異物が体内に入ってきてしまったら、免疫細胞の活躍に頼るしかありません。

免疫細胞は、骨髄で生産された、異物を攻撃する白血球と、異物の特徴を白血球に伝える樹状細胞の総称です。

白血球は多様ですが、生物が生まれ持った免疫力を発揮する自然免疫で活躍する細胞(マクロファージや好中球、一部のリンパ球など)と、後天的に異物の特徴を学んで強い攻撃力を示す獲得免疫で活躍する細胞(リンパ球)に分かれます。

それぞれの免疫と免疫細胞の働きについて、簡単にまとめてみましょう。

自然免疫

常に体内を移動していて、異物を見つけ次第攻撃するパトロール部隊です。
自然免疫を司るのは以下の細胞たちです。

・好中球

白血球の50~60%を占め、細菌などの異物を見つけると接触して包み込み(貪食といいます)、殺菌します。このように異物を取り込んで解体する細胞は食細胞と呼ばれます。

・マクロファージ

白血球の5%ほどを占め、細菌やウイルスのほか、死んだ細胞なども貪食して体内をきれいにします。また取り入れた異物の情報を他の免疫細胞に伝える役割もある、食細胞のひとつです。

・好塩基球・好酸球

好中球と関係がありますが、まだ詳しい役割は判明していません。

・NK(ナチュラルキラー)細胞

自然免疫の主要機能として働いているリンパ球です。
後述するNKT細胞とは異なり、一度病原体に感染して相手を識別するための情報が必要なく、腫瘍細胞やウイルス感染細胞を攻撃します。

・樹状細胞

皮膚、鼻、肺、胃、腸に存在し、正面防壁の際に異物と接触して、異物の特徴(抗原)を他の免疫細胞に伝える役割を持つ細胞です。抗原提示細胞とも呼ばれます。
また、食細胞のひとつです。

獲得免疫

最初の免疫細胞が記憶した異物の情報をもとに、活性化する免疫細胞です。

一度感染した病原菌を速やかに排除し、発症を防いだり、発症しても軽度の症状に抑えられたりするようになります。

骨髄で生産されるリンパ球(T細胞とB細胞からなる)がメインとして活躍しています。

・細胞障害性T細胞(キラーT細胞)

ウイルス感染細胞やがん細胞などを攻撃します。

・ヘルパーT細胞

樹状細胞やマクロファージから異物の情報を得て、他のT細胞やB細胞をサイトカインという物質によって活性化させ、効果的に異物を排除できるよう指令を出します。

・制御性T細胞

過剰な免疫の反応を抑制する働きがあります。

・B細胞

外敵を攻撃する抗体を作る免疫細胞です。
樹状細胞やヘルパーT細胞などの情報で活性化し、大量に抗体を生産するようになります。

・NKT細胞

自然免疫であるNK細胞と獲得免疫であるT細胞の両方の性質をあわせ持った免疫細胞です。

以上のように、体内に侵入もしくは発生した異物を、いくつもの細胞がそれぞれの役割をもって排除し、生物の健康は保たれます。

これらの免疫は体調やその他の要因によって、強まったり弱まったりします。

病気を予防するために、体調に気を使うことがとても大切なのは、この免疫系の働きを十分に発揮するためといえるでしょう。

しかし逆に、免疫が働きすぎて自己の正常な細胞まで攻撃してしまう"自己抗体"を生み出す病気もあります。

各種のアレルギー反応や、膠原病、関節リウマチなどの自己免疫疾患などがそれにあたります。

近年、日本でこうした免疫疾患が増えているのは、腸内の細菌の働きが弱まり、制御性T細胞が不活性化しているからというのが、研究により判明しました。

現代人の食生活の変化が、こうした免疫系に大きな影響を与えているのです。

さて、ではこれらの免疫ががん細胞に対してどのように働くのか、少し詳しく見ていきましょう。

人はどうしてがんになる?

冒頭でも申し上げたとおり、がん細胞は健康な人でも1日に5000個のがん細胞ができており、それらを退治しているのがリンパ球などの免疫細胞です。

免疫細胞が正常に働いている限り、がん細胞はすべて排除され、増殖することはありません。

しかし、何らかのきっかけで増殖が始まると、周囲の栄養を奪ってどんどん大きな塊となり、やがて臓器の働きを不能にさせるほど成長します。

しかも自分たちの仲間を体中にばらまいて、別の場所に転移させようとします。こうして体中の臓器がやがて機能を失って、生命活動を続けられなくなります。

がん細胞が増殖するきっかけは、ひとつは老化によります。人は老化によって免疫機能が落ち、がん細胞の増殖を許してしまうのです。

もうひとつは、免疫細胞のパトロールから逃れるために自分の目印(がん抗原)を隠してしまう機能を使ったり、免疫細胞の働きを抑制する物質を排出したりするなどして、免疫細胞に正常な働きをさせない機能があるのです。

こうしたがんの機能に目を付けた研究は盛んに行なわれており、これらの機能を無効化することでがんを治療しようとする免疫療法が次々に誕生しています。

免疫ががん予防・治療のカギを握る

がんの中には、免疫細胞の目を逃れているものもあります。

では、免疫細胞の機能を強化して、うまくがんに目を向けるように仕向けられないでしょうか。

――このような考えのもと、免疫療法が研究されるようになりました。

樹状細胞にがん抗原を記憶させて体内に戻す「樹状細胞ワクチン」や、直接がん抗原を体内に注入して樹状細胞を活性化させようとする「ペプチドワクチン」などは、いわゆる「がんワクチン」と呼ばれ、樹状細胞を通して免疫機能を活性化させる治療法です。

また逆に、がん細胞が攻撃から逃れるために、T細胞の細胞膜にある免疫を抑制するメカニズム(PD-1)を刺激する機能(免疫チェックポイント)があるのですが、これを阻害することで、T細胞にがん細胞を異物と認識させる薬が開発されました。

これは「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれ、分子レベルの機能を標的にした「分子標的薬」のひとつとして、大きな治療効果が期待されています。

このように、人が持つ本来の免疫機能を強化することでがんを退治する、という方向に、がん治療は大きく舵(かじ)を切りつつあります。

免疫療法は副作用が少なく、理想的な治療法なのです。今後も新たな治療法が次々と誕生し、いつかがんそのものを克服する日が来るかもしれません。

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