ウェルネスコラム「はじめに ―― がん専門医を含むすべての医師、すべての国民へ」

ウェルネスコラム

書籍連載

はじめに ―― がん専門医を含むすべての医師、すべての国民へ

日本の医療は迷走を続けています。

医療サービスの土台を支える国民医療費の増大はとどまるところを知らず、今や41兆円を超え、将来的に制度が維持できるのかさえ不安視されています。

原因を高齢化で片づけるきらいがありますが、それでいいのでしょうか。

そもそも、死因として最も多いがん医療費が重くのしかかっています。ほかにも、無駄な検査、手術や薬の処方がいかに多いことか。日本の医療には、時代遅れで無駄遣いの部分が多いと、私は考えています。

現在、がん標準治療の中心となっている三大療法(手術・抗がん剤・放射線)のうち、特に抗がん剤に関しては解決すべき問題があります。

21世紀の現在、欧米で抗がん剤といえば、新しいタイプの分子標的薬が主役となっており、殺細胞剤(日本の主流)は脇役にすぎません。世界のがん治療は様変わりしているのです。

しかし、わが国のがん治療では、新しい治療法が正しく評価され、十分に活用されているとは思えません。これでは日本の医療は世界で立ち遅れていくばかりです。

最近、世界初、日本発の「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬が登場して、日本でもがん治療に免疫が重要であることが認識されだしました。

しかし、この薬剤(商品名オプジーボ)には問題点がいくつかあります。

まず、「高額であること」です。この薬を使うと、平均的な患者さんで一人あたり年間約3500万円。厚労省が見直しを検討し、2016年11月薬価が50%下がることが決まりました。それでも年間1750万円と高額です。

しかも、完治はせず延命する薬なので、患者さんが生きておられるかぎり治療を続けることになり、最終的に天文学的な額になるものと見込まれます。

その先には、患者さんやご家族の自己負担増も懸念されます。今は高額療養費制度が機能しているから月10万円程度ですんでいますが、こうした薬で延命する患者さんが増えると国の財政が持たないので、近い将来、自己負担額は急増する可能性があります。すると米国のように「大病すると破産」が当たり前になります。

さらに、オプジーボは、誰に効くのか使ってみないとわかりません。そして、最も大きな問題は、あまり報道されない致命的な副作用が高頻度(10人に1人)で出ることです。詳しいことは本文で説明します。

それでも、ひとつだけいいことがあります。

がんの治療に免疫が欠かせないという当たり前の事実が世の中に浸透して、がん専門医の態度も少し変化したことです。

前著『医者の嘘』を上梓(じょうし)したときには、相当の反発を覚悟しました。

しかし、意外なことに、医療界から直接の反論や批判はなく、むしろ、元医大の教授という方(都内で心臓外科病院を開設した院長)から感謝の手紙をいただいたりしました。

患者さんたちからも激励の言葉をたくさんいただきました。ただ同時に、身辺に気をつけてくださいと異口同音に注意されました。よほど医療界に与える影響を懸念してくださったのだと思います。

幻冬舎から続編の要請を受けたとき、再度危険を顧みず、医療の問題点を世に問おうと思ったのは、がん治療の現状をこのままにしては、患者さんたちが救われないだけでなく、国も滅びてしまうという強い危機感を抱いているからです。

それに加えて最近、飲んではいけない薬、受けてはいけない手術、ジェネリック医薬品の問題などが、週刊誌などのメディアで盛んに特集されるようになりました。こうした報道が多く見られるようになったのは、拙著『医者の嘘』で私が警鐘を鳴らして以降で、それ以前はほとんど取り上げられることはありませんでした。そうした論調の変化に、たった一人の力でも世の中を変えるきっかけはつくれるのではないかと実感したことにも、今回は背中を押されました。

5万人を内視鏡で見てわかったこと

さて、私は内視鏡専門医で、開業以来20年、それまでの経験も含めた生涯の内視鏡件数は5万件を超えました。

早期がんを発見して内視鏡手術で完治させたときの喜びは一入(ひとしお)ですが、手遅れの進行がんを発見したときは、医者として完治のすべはないとわかってしまうだけにやるせない思いでした。

早期に治療できた消化器がんの5年生存率は、既存の標準治療だけでも95%以上になりますが、遠隔転移した胃がんや大腸がんでは、それが逆転して5~10%前後まで下がり、ほとんど助かりません。早めに発見することが何より大事なのです。

しかし、現実には、発見したときすでに手遅れの進行がんという場合が少なくありません。そういう人を助けるには、手術、抗がん剤、放射線に代表される標準治療とは異なる、画期的な治療法を取り入れなければ不可能です。

標準治療だけだと、なぜ5年生存率が低いのか。それは残念ながら、手術、抗がん剤、放射線が免疫を考慮していないからです。これらの治療法ががん治療に欠かせない武器であることは私もよく認識しています。その反面、がんに克(か)つうえで肝心な免疫にダメージを与えこそしても、免疫力を高め、回復させることは望めません。

標準治療のがん専門医が、進行がんの患者さんに「完治」という言葉を使えないのはそのためです。誰もが望む完治を目指す治療を実用化することが必要なのです。

私がANK免疫細胞療法を12年前から実施しているのも、がん治療に欠かせない「免疫」というパズルのピースを補い、一人でも多くの患者さんを完治させたい一心からにほかなりません。

ANK免疫細胞療法は、がん免疫の主役であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)を増殖強化して体内に戻す治療法です。

12年前、この免疫療法を知ったときには、何より「理にかなっている」と思いました。すぐに導入を始め、現在ではすでに症例が600を超えました。最近では、ステージⅣでも標準治療との併用により完治することが増えてきており、出会った最初に「これは本物だ」と思った直感は間違っていなかったと確信しています。

大手メディアが運営する医療サイトでは、2015年11月10日の記事に、慢性骨髄性白血病の治療で、ある分子標的薬を投与した患者さんのうち、NK細胞が増えた人たちほど再発が少なかったと書かれています。こうした記事の内容は間接的にANK免疫細胞療法の正しさを支持するものだと思います。

ANK免疫細胞療法を受けたいという患者さんは、全国から訪れます。

しかし、実態は悲惨です。2人に1人は断らざるをえないのが実情です。標準治療をやり尽くしてから、「最後の頼みの綱」と思っておいでになる方が多いからです。

それでは免疫がすでに大きなダメージを受けていて、望むような効果は期待できません。

実はその背景にも、医者の大きな罪があります。

本文で詳しく述べますが、標準治療に携わっている医者たちは、患者さんたちに免疫を無視した標準治療を強要し、免疫療法を否定します。すなわち、がん患者の治療選択権を奪い、自分たちに都合のいいように誘導しているのです。

私からいわせると、彼らは21世紀の医療を否定し、自らの縄張りや権威を守ろうとしている医者の風上におけない存在のようにしか思えません。人の命を預かり、その命を救うのが医者の使命である。そう考えているとはとても思えません。

このような旧態依然とした思考回路を持つ医者たちが、頭の固い年寄りというわけではなく、多くは私の息子ぐらいの年齢なのですから呆(あき)れるばかりです。

その対極には、「がんは放置すべき」という偏った自説を振りかざして、多くの患者さんを惑わせている医者もいます。本来なら治ったはずのがんを放置したために、後で泣いている患者さんたちがいることを私も知っています。

また、患者さんの無知に付け込んで「がんビジネス」をもくろむ、とんでもない医療機関も少なくありません。彼らは、医学的に効果があるはずもない免疫療法を標榜(ひょうぼう)し、CTなどの画像を加工して(簡単にできます)あたかも著効例であるかのように見せかけ、自分たちの医院に患者さんを囲い込もうとします。その背後には、舎弟企業や反社会的勢力もいて、新たな資金源として企たくらんでいると聞いています。

そういう悪の手先になっている悪徳医者を見分けて排除する努力も、がんに克つために重要です。簡単な見分け方として、サイトなどで治療前後のCT画像を出している医療機関は眉に唾してみたほうがいいでしょう。厚労省も悪質なサイトを近く取り締まりの対象にするようです。

従来の医学常識では対応できない時代

私は2017年1月で70歳になりました。勤務医なら定年をとっくに迎えていますが、開業医なので自分で定年を決めることができます。

私の定年は、全国のがん専門医が、免疫を温存する分子標的薬と強力な免疫療法の併用でがんを完治させることに理解を示し、病診連携で協力体制を築いてがんサバイバーを増やし、国民医療費を削減して国家財政の破綻を回避する道筋をつけたときです。

現在、国立医療機関や大学病院に、少数ですが、私の治療理念に共鳴してくれる医者も増えてきており、病診連携でステージⅣでも完治する症例が増加してきました。

とはいえ、まだまだ拒絶的な医者が圧倒的に多い、嘆かわしい現状は変わっていません。

がん以外でも状況は同じです。

医者は、「動脈硬化は治らない」「すりへった軟骨は再生しない」と言います。しかし私は、「動脈硬化は治る」こと、「軟骨は再生する」ことを長年のコラーゲン臨床研究における数百の症例で確認してきました。医学常識は常に医学の進歩とともに覆るのが当然です。

多くの医者は、従来「医学常識」とされてきたことを根拠に、新たな知見を無視して、患者を救うことを放棄し、ただ食い物にしてはいないでしょうか。それを罪つくりだというのはいいすぎでしょうか。

数々の医者の罪が、医療不信や、国家財政の逼迫(ひっぱく)による医療サービスの危機に拍車をかけています。人命を軽視し、国民医療費を食い物にしている医者は、悔い改めなければ罰を受けるでしょう。

年齢からいえば、全国の現役医師の大多数が私にとって後輩のようなものです。卒業大学は異なっても、同じ日本の医者として後輩に苦言を呈するのは先輩の務めです。

後輩が苦言を受け入れてくれることを願って本書を書いたつもりですが、かなり耳に痛い内容であることは間違いありません。しかし、これだけきつく指摘しないと、患者にとっても国にとっても不幸な状況は永遠に変わらないでしょう。

医者の罪ばかり指摘しては不公平というものです。本書では、ジェネリック医薬品やサプリメントの罪についても言及しました。

日本医師会ではサプリメントの弊害ばかり強調しますが、国民が毎年1.5兆円サプリメントを消費している事実を踏まえると、もっと踏み込んで、医師主導の良質なサプリメントを開発するのが望ましいと思います。

私はテニスを50年続けてサーブの改良に励み、最近ではファーストサーブの時速が160㎞に達して、さらに上を目指しています。嘘だと思われるかもしれませんが、毎月、30代、40代のプロコーチと対等に試合を楽しんでいるのです。

健康でいられるわけは、自分で開発したコラーゲンとプラセンタのサプリメントを毎日飲んでいるからだと確信しています。頸動脈(けいどうみゃく)の厚さ(IMT)は0.6㎜と、血管年齢は40代です。

若い頃は空手、最近ではキックボクシングを嗜たしなんでおり、そちらの方面でも腕に覚えはあります。しかし、これだけの内容を上梓したら、どこから矢が飛んでくるかわからないので、患者さんたちの忠告に従い、当分は暗い夜道の一人歩きをしないようにしようと考えています。

この本が日本の医療への警鐘となり、さらなる変化のきっかけになることを願うばかりです。

2016年12月

新日本橋石井クリニック院長・理事長・医学博士 石井 光

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