クリニックコラム「「夢の治療薬」は自己免疫疾患が多発する副作用がある」

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医者の罪と罰4 欺瞞の渦 医者と嘘の隠ぺい
「夢の治療薬」は自己免疫疾患が多発する副作用がある

キラーT細胞の攻撃力を解放する分子標的薬

2014年、前年に米国で初めて承認された免疫チェックポイント阻害薬である分子標的薬(オプジーボ)が、日本でも一部のがんに使えるようになりました。

今のところ、メラノーマ(皮膚がんの一種である悪性黒色腫)と一部の肺がん、腎臓がんで保険適用になっていますが、将来的にはもっと適用範囲を広げていこうという気運が巻き起こっています。

医者の罪と罰

医者の罪と罰

これはどういう薬かというと、がん細胞の「盾」のひとつを無力化するのです。

がん細胞が免疫から身を守るすべは実に多彩です。
そして、最後の手段として、攻撃をかけてくる免疫細胞の表面物質に結合し、ブレーキをかける物質を撒(ま)き散らすという手も使います。 忍者の使う〝撒きビシ〟みたいなものです。

免疫チェックポイント阻害薬は、その〝撒きビシ〟がくっつく免疫細胞側の表面物質に先に結合します。

すると、いざがん細胞がブレーキ物質を出しても、免疫細胞は攻撃力をそがれないまま、がん細胞を殺すことができるというわけです。

現在承認されている免疫チェックポイント阻害薬のうち、オプジーボは、主にT細胞の表面に出ているPD-1という免疫チェックポイント分子に結合するので、PD-1抗体と呼ばれています。

NK細胞以外にも、がん細胞を攻撃する免疫細胞はいくつかあり、T細胞の一部にあたるキラーT細胞(CTL)が代表的です。
CTLは、NK細胞を主力とするがん免疫においては補助部隊。
ANK免疫細胞療法実施医療機関でも、条件が合えばCTL療法を実質無償で提供しています。

私は、比較的安心して使える分子標的薬なら、積極的に保険適用外でANK免疫細胞療法と併用しています。そこで、PD-1抗体はどうかと思ったことがあり、調べてみました。

すると、これはけっこう危ない薬なのです。

免疫のブレーキを外すと自己免疫疾患が起こる

CTLの認識システムは、NK細胞とはやや異なります。

NK細胞のように、がん細胞と正常細胞を見分けているわけではなく、自分の標的物質を見つけたら攻撃する、単純な細胞なのです。

NK細胞は、生まれながらに、がん細胞を識別し、狙い撃ちで攻撃する能力をもつ「自然免疫」です。
一方、CTLは、相手が、がん細胞か正常細胞かを区別せず、自分のもつ型番と合う標的を見つけると、急激に増殖しながら攻撃をかける「獲得免疫」となります。

ところで、がんという病気の大きな特徴は、異常に強い免疫抑制ですが、私たちの免疫は、健康なときでも、ある程度抑制されているのが普通です。

免疫の働きが過剰になると、キラーT細胞が暴走して、自分自身の細胞を攻撃する「自己免疫疾患」を起こしてしまうのです。 アレルギーやリウマチなどです。

PD-1やCTLA-4などの免疫チェックポイント分子は、T細胞が過剰に活性化して、自己細胞を攻撃しないように制御するボタンでもあるのです。

なお、CTLA-4はキラーT細胞の暴走を抑えている制御性T細胞に特徴的な免疫チェックポイント分子で、2015年に承認された免疫チェックポイント阻害薬ヤーボイ(商品名)はここに作用するものです。

PD-1であれCTLA-4であれ、免疫チェックポイント分子を薬で無効にすると、免疫システムはブレーキが壊れた車のような状態になります。

それが、免疫チェックポイント阻害薬の副作用の特徴です。
免疫を解放する反動として、Ⅰ型糖尿病、炎症性腸疾患、関節リウマチ、膠原病(こうげんびょう)、筋ジストロフィー、重症筋無力症などの自己免疫疾患、心筋炎、間質性肺炎などを発症する可能性があるのです。

大きな病院でインフォームドコンセントを受けた患者様から聞いたのですが、オプジーボを使用した人に副作用が出る頻度は3割ぐらい、治療不能な重篤な副作用も1割ぐらいの人に現れると言われたそうです。

製薬会社に聞くと、現在、国内で免疫チェックポイント阻害薬を使える医療機関は限られています。
しかし、個人輸入して自由診療で使っている医療機関もあるということです。

大きな病院ならともかく、設備の整っていないクリニックでこういう薬を不用意に使うのは、ダムの堰(せき)を外すようなもので、何が起こるかわかりません。

しかも、この薬もがんを完治させるものではなく、治療効果は「延命」にとどまります。
こんな薬を「夢の薬」とあおるのは、罪深いことではないでしょうか。

薬の怖さに対して無感覚になっていないか

もしも免疫チェックポイント阻害薬が、T細胞ではなく、NK細胞だけの免疫チェックポイント分子をブロックするものなら、もっと違う評価ができるかもしれません。

とはいえNK細胞の制御システムは、より複雑だと思われます。そういう薬ができればいいのだが......と夢想するのみです。

しかし私は、T細胞だからダメ、NK細胞だからいいと主張したいわけではありません。薬というものは常に「両刃(もろは)の剣」であり、切れすぎる刃物はやはり危ないということを、認識すべきだといいたいのです。

私自身も以前、ATLという特殊な白血病で保険適用となっている「ポテリジェント抗体」に、大きな期待をかけたことがあります。

分子標的薬の中には、NK細胞のがん攻撃力を高める「ADCC抗体」と呼ばれるタイプがけっこうあります。
例えば、ハーセプチン(商品名)という薬はNK細胞のがん攻撃力を2~3倍にします。 こういうものは当然、ANK免疫細胞療法とも相性がいい薬です。

しかし、ポテリジェント抗体はそのADCC活性を何十倍にもします。
この技術で分子標的薬の切れ味がよくなれば素晴らしいと思っていたのですが、実際にはやはり副作用が強くなるようです。

何十倍でなく、2~3倍だからいいということもあるのです。 薬というものに対して、医師は畏れを持たなければいけないと思います。

ある患者様が、がん拠点病院でANK免疫細胞療法のことを相談したら、「それよりも免疫チェックポイント阻害薬がいい」と言われたそうです。

その患者さんは、メラノーマでも肺がんでもないので、そもそも保険診療で免疫チェックポイント阻害薬は使えません。
医者は、意味のない話を持ち出して、患者様にどんなメリットがあると考えたのでしょうか。

2016年11月現在、腎細胞がんに対して適用拡大されました。

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