クリニックコラム「抗がん剤の限界を隠している医師たち」

クリニックコラム

書籍連載

医者の罪と罰4 欺瞞の渦 医者と嘘の隠ぺい
抗がん剤の限界を隠している医師たち

分裂中の細胞なら見境なく殺す殺細胞剤

新しいがん治療薬が出るたびに、メディアは「夢の新薬」だと大騒ぎします。
しかし、そもそも薬でがんを完治させるということは、原理的に不可能なのです。

薬というものには、NK細胞のような識別能力がないので、がん細胞と正常細胞を見分けて攻撃するわけではありません。
抗生物質が効くのは、人の細胞にはない細菌の構造を標的としているからで、がん細胞と正常細胞に、そういう明確な物質的違いはありません。

医者の罪と罰

医者の罪と罰

だから、抗がん剤はがん以外の細胞や、正常細胞である免疫細胞も攻撃してしまうのです。

そういう〝薬の限界〟を理解しないで、「最近は、がん細胞だけを殺す薬が出てきました」などと語る医師がいるので、あまりにも能天気だと呆れざるをえません。 そういう医者の言葉は信用できません。

では、抗がん剤とは、どのような作用をする薬なのでしょうか。

従来の抗がん剤は「殺細胞剤」といって、がん細胞か正常細胞かを問わず、分裂中の細胞を殺す薬です。

この薬は、「多くのがん細胞の分裂は、正常細胞よりも速い」という前提で使われています。

極端な話、正常細胞が大きなダメージを受ける前に、がん細胞のほうをより多くやっつけるという発想です。

しかし、がん細胞より分裂が速い正常細胞はいくらでもいるので、必ず、ご存じのような副作用が伴います。 正常細胞が全滅しないうちに、がん細胞をすべてやっつけるということは無理なのです。

誤解がないように付け加えますが、私は「殺細胞剤を使うな」とはいっていません。

その限界をわきまえて、最大の治療効果を引き出すべきだと考えています。 しかし、医者は抗がん剤の限界をほとんど語らず、効果だけを患者に強調しがちです。

がん細胞の増殖を止めるが殺すことまではない分子標的薬

欧米の新薬開発の専門家は殺細胞剤の限界をよく知っているので、最近になって開発されている新しいがん治療薬は、ほとんどが「分子標的薬」と呼ばれるものになってきました。

欧米では、標準治療の化学療法も、すでに分子標的薬を中心としたものに様変わりしてきています。21世紀の抗がん剤は分子標的薬であり、殺細胞剤はひと時代前の薬になっているのです。

わが国のがん標準治療が、いまだに殺細胞剤を主流にしていることが、いかに時代遅れかわかるのではないでしょうか。

分子標的薬にはさまざまなタイプがあります。
しかし、主に共通する働きは、殺細胞剤のように細胞を殺すことなく、その増殖にブレーキをかけることです。

がん細胞でも正常細胞でも、細胞の表面にはいろいろな物質が顔をのぞかせています。
そうした細胞表面物質の中には、細胞が分泌するサイトカイン(ある種の信号を伝える物質)と結合して、増殖信号を核に伝えるものがあります。 これを、増殖信号の「レセプター」(受容体)といいます。

レセプターにサイトカインが結合すると、細胞の核に増殖信号が伝わって、細胞は分裂を始めます。
そして、がん細胞には、この増殖信号を受け取るレセプターが、非常に多かったり、過敏だったりするものが多いのです。

そこで、そのレセプターを先にふさいでしまい、増殖信号を受け取れなくするのが分子標的薬です。 そうして増殖信号をブロックすれば、がん細胞の勝手な増殖にブレーキをかけ、がんの進行を食い止めることができます。

ただし、分子標的薬も「がん細胞だけに効く夢の治療薬」ではありません。
殺細胞剤のような副作用はありませんが、正常細胞の分裂もじゃまするので、いろいろな副作用があります。

分子標的薬は、進行を食い止めている間に、NK細胞ががん細胞を殺してくれると大きな効果を発揮します。 ときどき「スーパーレスポンダー」といって、がんが消えてしまうような患者様も出ます。

しかし、薬自体はがんを殺さないので、分子標的薬も「がんだけを殺す薬」といったらいいすぎになります。

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