ウェルネスコラム「安すぎる手術料が病院を抗がん剤漬けにしている」

ウェルネスコラム

書籍連載

医者の罪と罰3 患者無視 治療選択の妨害
安すぎる手術料が病院を抗がん剤漬けにしている

日本の病院の手術報酬は米国の10分の1以下

S・T様の証言をもう少し別の角度から検証してみましょう。

標準治療の進行がん治療では、手術と抗がん剤は基本セットになっています。 患者様が抗がん剤を断ると、病院でいい顔をされません。 ガイドラインがそうなっていることと併せて、抗がん剤治療をしないと病院は赤字になってしまうからです。

医者の罪と罰

医者の罪と罰

それは、保険診療の診療報酬に偏りがあるからです。 日本の手術代は異常に安いのです。 保険点数を決めている厚労省にも罪があり、多くの医師が是正を求めていますが、なかなか改善されません。

同じ手術をしても、日本の手術料は米国の10分の1以下ではないかと思われます。

例えば、米国で急性虫垂炎(盲腸)の手術をすると、病院は2日程度の入院でトータル400万円ぐらいの報酬を受けます(費用を出すのは通常、民間の医療保険会社です)。

10年前のこと、近隣の大手商社から、「社員が米国滞在中に受けた急性虫垂炎のカルテを検証してほしい」と要請がありました。 そのカルテを拝見すると、費用明細もついていて、日本円で400万円でした。

治療内容はごく普通の虫垂炎の手術で、入院もたった2日。 私はまず費用のほとんどが手術代であることに驚きました。 そしてカルテを詳細に見ると、分厚い書類には外科医、麻酔科医、看護師とおのおのの担当が記述されていますが、すべてコピーアンドペーストで数十ページになっていて呆れました。

そんな内容で400万円ですから、それに比していかに日本の医療費が安いか実感しました。 一方の日本では、同じ手術の報酬が、入院費を含めてトータル30万~40万円といったところでしょう(費用の大半を出すのは社会保険、国民健康保険などの公的保険です)。 本人の窓口負担は十数万円でしょう。

がん治療でも同じことで、手術代が安い分、病院経営を維持するには、抗がん剤を使い、入院日数を長くして帳尻を合わせるほかありません。

それにしても、がんのように生死を分けるリスクが伴う手術をして、手術代が数十万円というのはおかしいと思わなければなりません。

もし患者様が手術ミスで亡くなったら、億単位の賠償が請求されることもあります。

もちろん私がいいたいのは、手術ミスで死亡した医療事故に対する賠償請求額として高すぎるということではありません。 数十万円の手術代で億単位の賠償を請求されるから、最近の医学部卒業生が命にかかわる外科系を回避して、眼科や皮膚科に流れる傾向が強いのです。

不要な手術をする外科医もいるかもしれませんが、大多数は真摯に手術と向き合って診療しています。 外科の医療従事者のおかれた厳しい環境に対して、批判するのは簡単ですが、もっと国民が理解しないと外科医がいなくなってしまうのではないかと危機感を覚えます。

私は、完治しない、延命だけでしかない、しかも重大な副作用の可能性が内在するオプジーボに高額の薬価をつけるよりも、米国のように手術だけで病院経営ができるように医療のゆがみを是正していかないと、いつまでたっても抗がん剤の垂れ流しがなくならないと思っています。

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