コラム「「抗がん剤しか方法はない」と言う医者」

コラム

書籍連載

医者の罪と罰3 患者無視 治療選択の妨害
「抗がん剤しか方法はない」と言う医者

再発率を10%下げるだけの治療

ここで、実際に保険診療の主治医がどういうことを患者様に言うのか、当院に来られた患者様に紹介してもらいましょう。私は、前著に対して「手前味噌(てまえみそ)ではないのか」というあらぬ批判を受けました。この本でも、あくまで「患者の治療選択権の尊重」を述べているつもりですが、的外れの非難を受けないように、ご本人の体験談をそのまま紹介します。

医者の罪と罰

医者の罪と罰

I・S様、60代の男性です。

昨年(2015年)9月に受けたPET検査でがんが疑われたため、紹介された病院で大腸内視鏡検査を受けました。

やはりS状結腸がんができているとわかり、10月の中旬に腹腔鏡手術で切除しました。手術は6時間ほどかかりました。

そして、病理検査の結果、近くのリンパ節に転移している疑いがあり、ステージはⅢaになるということでした。

2週間で退院しましたが、「すぐに術後化学療法(抗がん剤治療)を始めたほうがいいので早く決めてください」と、執刀してくれた医師から言われました。

「全身に散っている可能性があるので、抗がん剤しかありません」という説明でした。

ところが、その治療を受けても、再発する確率が10%下がるだけだと言います。

一方で、いちばん軽い薬を使うので副作用の心配はそれほどないとも言われました。

とりあえず黙って聞いていましたが、素人なりに矛盾を感じました。

「たった10%の効果を狙って、わざわざ弱い薬を使う意味」や「もっと効果のある強い薬があるなら、なぜ使ってくれないのか」などがわからなかったのです。

私自身より、むしろ同席していた妻が不信感を募らせたようで、「本当にそれしかないのでしょうか?」と疑問をぶつけました。

抗がん剤治療を否定したわけではなく、免疫を上げる方法はどうかなど、自分が調べて考えていたことを医師に尋ねたのでした。

すると、「マンションを買えるぐらいのお金をかけて治療した人もいますが、結局亡くなってしまいましたからね。そんなことはしないでくださいよ」と、全否定の言葉が返ってきたのです。

こちらは命がかかっているのに、亡くなった患者様のことまで引き合いに出されたことに、後で妻は憤慨していました。

放心状態に近かった私をよそに、妻は医師とやりとりを続けていました。

「がんって、なぜなるのですか?」「年を取って免疫力が下がるからですよ」

「抗がん剤は免疫力を下げないんですか?」「それしか方法はないんですよ」

「先生自身ががんだったら、抗がん剤を使いますか?」

医師は、しばらく沈黙した後で、「使うね」と言いました。

セカンドオピニオンのためのデータを出し渋る

抗がん剤治療を受けるつもりが失(う)せた私は、翌日、もう一度病院に行ってセカンドオピニオン用のデータをくださいと言いました。

「どこに行くの?」と聞かれたので、正直に免疫細胞療法を受けたいと言うと、医師は不機嫌になりました。

そして、「全部は出せませんよ、責任が持てないから」と言われました。

後日、そのデータを持って石井クリニックに行ったのですが、やはり不備があったようで、検査のやり直しになりました。

それでも、石井先生からは「悪くないタイミングで来ましたね」と言われました。

ステージはともかく、抗がん剤をやる前で免疫が傷んでいないからだそうでした。

11月に入ってすぐリンパ球を採取し、年末から、ANK免疫細胞療法の点滴を始めました。

最終的に2クール受け、今後もし腫瘍マーカーの値が上がったら、薬で治療する方法も検討することになっています。


以上がI・S様自身の体験談です。今は、3カ月に1回、通院してもらって様子を見ています。

彼のようなステージⅢaの進行がんを完治に導くというのは、標準治療だけでは難しいことです。

担当医の勧めるまま抗がん剤治療をやっていたら、I・S様がどうなっていたか、あまり楽観はできません。

もちろん、しばらく経過を見ないと断言はできないのですが、この例は、標準治療(この場合は手術)とANK免疫細胞療法をうまく組み合わせると、今までと別の可能性が見えてくることを示しています。

なお、I・S様は、2クール目を受けているときに、持病の花粉症がよくなって驚いていました。

花粉症のようなアレルギー性の症状は、「自己免疫疾患」といって、免疫が過敏になっているために起こります。

治療の過程でアレルギーが治るようなケースはほかにもあり、ANK免疫細胞療法が、単純に免疫細胞を強化するというより、免疫本来の状態を回復させるものであることを示していると思います。

ちなみに、ANK免疫細胞療法は免疫を強く刺激するので、高熱などの副反応を伴います。

I・S様の場合は、副反応が穏やかでしたが、点滴当日に限れば、もっと強くでる方もいらっしゃいます。ただし、発熱などは一過性です。

私のANK症例は、すでに12年間で600例を超えました。実は、引退した医師や現役の医師が、私のクリニックにがん患者として訪れることもあります。

その中には、まさか、ANK免疫細胞療法を受けたいと言った患者様を止めた人はいないと思っています。

多くのがん専門医は、自分ががんになったとき、どうするのだろうか。ときどきそんなことも思います。手術でI・S様を救った担当医にも、そこを理解してほしいと思います。

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