ウェルネスコラム「一般の人には意外と不評だったがん放置療法」

ウェルネスコラム

書籍連載

医師の罪と罰1 机上の空論 放置療法
一般の人には意外と不評だったがん放置療法

がんと診断されたらあなたは放置しますか?

誤解がないように補足しておきましょう。私自身が「がん放置」に否定的なことはもちろん、たいていの医師はがん放置療法の理論に疑問を呈しています。

がん放置療法は、プロの目から見てまともではないのです。

医者の罪と罰

医者の罪と罰

しかし、一部の有力なメディアの取り扱いなどに影響を受けて、一般の人が「がん放置理論」に引きずられてしまうことは往々にしてあるでしょう。これはかなり心配なことです。

そこで、この本を書くにあたって、一般の人がどれぐらいK理論を知っているのか、どう思っているのか、独自にアンケート調査をしてみました。

アンケートに答えていただいたのは、当院に直接関係がない企業の社員の皆さんなどです。ふだんから産業医として多くの企業の検診などに携わっていることが、こういうときに役に立ちます。

実際にお願いしてみると、491人もの人たち(20~80代の男女)から回答をいただくことができました。ちなみに、そのうち、がんの患者様は10人でした。

その結果は、私を少し安心させてくれるものでした。

思ったほど知られていないK理論

1問目の「あなたはがん放置理論を知っていますか」という問いでは、「知っている」と回答した人が22%(108人)、「知らない」と回答した人が78%(383人)でした。

マスコミなどでは大きな話題を集め、その著書に出版社から賞も贈られているがん放置理論ですが、実際には、8割近くの人に知られていないことが明らかになりました。

特に若い世代ほど、がん放置理論を知らない傾向が強く、20~30代では86.3%の人が「知らない」と回答しています(若い世代には、がんそのものへの意識が低いのかもしれませんが)。

男女別に見ると、知らなかった人の割合は男性の回答者で76.7%(234人)、女性の回答者で81%(133人)で、知らない人の割合は、女性のほうが高いことがわかりました。

例の医師のがん放置理論を知っていますか?

がん放置理論を正しいと考える人は5%弱

アンケート用紙にがん放置理論の要約を掲載し、1問目で「知らない」と答えた人にも、それ読んで回答してもらえるようにしました。

その結果、「正しい」と回答した人は4.5%(22人)しかいませんでした。それに対して、「間違っている」と回答した人は92.3%に達しました。

大部分の人は、がんは治療せずに放置してもよいとするK理論を、受け入れがたい主張だと考えていることがわかりました。

自分のがんを放置しようとする人はさらに少ない

最後の設問は「あなたはがんになっても放置しますか」としました。この問いには、「放置したら進行するので治療する」と答えた人が94.7%(465人)。ほとんどの人は、なんらかの治療の必要性があると考えていました。一方、「放置する」と回答した人も3.7%(18人)いましたが、これは、2問目でがん放置理論を「正しい」と答えた人の割合(4.5%)よりさらに低いものでした。

たとえ理論的には正しそうだと思っても、実際に自分ががんになったとき、治療せずに放置するという選択には抵抗が大きいのだろうということがうかがえます。回答いただいた人たちは専門家ではありませんから、そうした一見、矛盾するような回答はあるものです。一般の健康な人は、がんを放置して大丈夫という専門家がいれば、「つらい治療を受けなくてすむのかな」と期待するはずだからです。

しかし、実際にがんになった場合のことを考えれば、「放置すると進行するのではないか」という心配がぬぐえなくて当然です。

私のところに来る患者様の中には、以前はがん放置療法を信奉していたという人たちもいます。そして、複数の人たちが、先述した川島なお美さんの闘病の経緯を知って、がん放置療法が信用できなくなったと言っています。

私は、例の医師個人を攻撃したいわけではありません。彼の放置療法は、よくマスコミに取り上げられ、それを信じる一般の人たちも一部いらっしゃいます。

その図式全体が、〝私たち医者の罪と罰〟を、象徴しているような気がしてならないのです。患者様をミスリードする医者の罪は、重いといわざるをえません。

【次のページ】放置療法を論破できない医者たちの不勉強

【前のページ】知っておいてほしい、がんの発生のしかた

目次へもどる

がんの相談センター

ご相談・資料請求はこちら