ウェルネスコラム「知っておいてほしい、がんの発生のしかた」

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医師の罪と罰1 机上の空論 放置療法
知っておいてほしい、がんの発生のしかた

医師の罪と罰1 机上の空論 放置療法

がんの多くは、慢性の炎症が続いているところで、細胞の性質が徐々に変わっていって起こります。ですから、がん(悪性腫瘍)が、ポリープなど良性の腫瘍と地続きになっていることは、生物学的には明らかになっているのです。

医者の罪と罰

医者の罪と罰

1990年頃、それを遺伝子の研究によってはっきりさせたのが、米国ジョンズ・ホプキンス大学のバート・ボーゲルスタイン教授らです。

ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、多くの大腸がんの検体を調べ、正常細胞ががん化するまでには、いくつもの遺伝子変異の積み重ねがあることをつきとめました。

前がん状態や早期がんの細胞のDNAを調べると、正常細胞とは異なる遺伝子の異常が見られます。そして、より進行したがん細胞では、その遺伝子の異常が増えるとともに、細胞の形、つまり「顔つき」がどんどん悪くなっていきます。専門的にいうと、過形成→異形成→腺腫→がんと進行するのです。

これは胃がんでも、萎縮性胃炎→腸上皮化生→異形成胃炎→腺腫→胃がんとほぼ同じような進展形式を取ります。大腸がんでは、過形成ポリープ→腺腫→大腸がんという進展形式です。病理医が、手術で取った腫瘍細胞を顕微鏡で見て、「良性」とか「悪性」をグループⅠからⅤまで分類して判断している根拠はそこにあります。

一般的にいって、がんの悪性度は、進行が速くてたちの悪い「未分化型」か、比較的進行が遅くてたちの悪くない「分化型」かの問題であり、もどきとか本物とかはありません。

遺伝子変異の積み重ねによって性質を変え、最終的には多臓器に浸潤、転移するモンスターにもなるのが「がん」という病気です。

だから私たち医師は、早期発見・早期治療が大事だと訴えているのです。臨床医の立場ら素朴に見ると、放置療法を主張する医師の理論構築には〝臨床経験の浅さ〟が垣間見(かいまみ)えます。あたかも、臨床経験のない学者が都合のいい論文を寄せ集めて導き出した仮説のように感じられるのです。

粘膜内にとどまっているうちが完治のチャンス

がん放置療法の根拠とされている「本当のがんは、初めから転移している」というのも大きな嘘です。私の経験的には、「未分化型のがんの一部は、初めから転移していることがある」というのが事実です。

がんの進行度(ステージ)は、部位ごとに0期からⅣ期に分けられますが、0期やⅠ期のがんは粘膜内にとどまっていて、まだ転移していません。この段階で手術し、すべて取りきることができれば、事実上がんは完治します。これを放置療法の医師は「がんもどき」と呼んでいるようです。

こうした早期がんが転移していないのは、〝まだ〟粘膜を支えている基底膜を突き破っていないからで、「がんもどきだから」ではありません。

がん細胞の定義は、不死化して自律的に増殖する細胞です。

ただし、この「がん細胞」という名前を、「チフス菌」とか「NK細胞」などのように具体的な固有名詞だと思わないでください。

がん細胞というものは〝千差万別の増殖〟をしている細胞です。それが、さらに〝千差万別の異常性〟を増していくのです。

仮に百歩譲って、粘膜内のがんがまだ転移する能力を獲得していなかったとしても、「転移するがんに化けるのは時間の問題」なのです。

基底膜の下の筋層まで達すると、がん細胞は、血流に乗って転移しやすくなってしまいます。

その前のタイミングを逃してはいけないのです。

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