ウェルネスコラム「頭の中だけで治療理論をつくるのは傲慢」

ウェルネスコラム

書籍連載

医師の罪と罰1 机上の空論 放置療法
頭の中だけで治療理論をつくるのは傲慢

謙虚たれ! 医者は臨床経験なしにものを語れない

臨床医が実感を持って語れるのは、やはり自分が診た症例についてです。逆にいえば、発想が経験に縛られるということはあります。

放置療法を主張する医師は、かつて乳房温存療法を主張した医師なので、「一般に進行が遅いとされる乳がんを診ていて組み立てた理論なのではないか」と解説する医師もいます。

医者の罪と罰

医者の罪と罰

たしかにがんの中には、進行が遅く、様子見がひとつの選択肢となりうるものもあります。例えば、甲状腺がんや前立腺がんは非常に進行が遅いため、早急な手術は不要という考えもあります。乳がんの多くも、転移するのは10 年後ぐらいですから、進行が遅いとはいえます。

ただし、若い女性などでは、発見されたときにすでに骨やリンパ節へ転移しているケースも稀ではありません。

一方、川島なお美さんのわずらった胆管がんや、すい臓がん、スキルス胃がん、食道がん、肺小細胞がんなどは進行が速いとされています。

しかし、それでも、「がんか、がんもどきか」という二元論は机上の空論で、臨床にはそんなものは当てはまりません。

例えば、私たち内視鏡専門医は、大腸ポリープががん化したり、慢性胃炎から胃がんが生じたりするケースを、日常的に見ています。したがって、がんもどきとがんの区別など、そこにはありません。この見方には、ほとんどの消化器専門医が同意してくれるはずです。

臨床医にとっては、やはり経験がものをいいます。臨床経験の少ない医者には、わからないこともそれだけ多いはずなのです。わずかながん種と少ない症例を考察の材料にして、がんを放置していいというのは乱暴だということです。

なお美さんはたまたま芸能人だったので、がんを放置した期間の長さがセンセーショナルに報じられましたが、同じ道をたどっている一般の人もいるのではないでしょうか。

あなたの周りに、「無治療が最善の延命策」という誤った説にミスリードされて、ベストな治療のタイミングを逸している患者様はいませんか。

私の患者様のお知り合いには、例の医師のセカンドオピニオンを受けて「がん」を放置して悲惨な目に遭った人が複数います。一人の医者が標榜する仮説のために、多くの患者や家族が陰で泣いているとしたら、これほど大きな罪はないと思います。

最近の症例ですが、66歳女性の肺がん、多発リンパ節転移(ステージⅣ)の患者様が面談に来ました。

彼女は2年前に発見した時点ではステージⅡでした。姉の勧めでその医師のセカンドオピニオンを受けて放置を勧められその結果、現在はステージⅣとなり手術もできないので免疫療法を受けたいと私のクリニックを受診したのです。CT画像を見ると肺の原発巣は発見時2㎝以下だったのが6㎝と3倍以上になっていました。その医師を薦めた姉が付き添っていて、その後悔した表情が忘れられません。ステージⅡの時点なら手術後ANK免疫細胞療法を受ければ確実に完治しました。

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