ウェルネスコラム「はじめに」

ウェルネスコラム

書籍連載

はじめに

人類の生命を脅かす病――がん。がんを克服することは、人類共通の課題と言っても過言ではないでしょう。かつて「成人病大国」とさえ言われていた米国では、1977年に食生活指針を出して以来、国を挙げて心臓病やがん対策に取り組んできました。その成果もあってここ数年、米国のがん死亡率は、減少傾向にあります。米国がん協会(ACS)が2013年に発表した統計では、2005年から2009年の5年間で、がんによる死亡率は、男性で1年あたり1.8%低下、女性では1.5%低下しています。その結果、2009年のがん死亡率は、最も高かった1991年と比べると20%減少しています。

保険診療+先端医療  完治をめざす「がん治療設計」

保険診療+先端医療
完治をめざす「がん治療設計」

一方、日本のがんによる死亡率は、10年前と比べて改善されておらず、発症率は増加傾向にあります。増え続けるがん患者に対し国は、「2015年までに、がん死亡率を20%減らす」という目標を、事実上断念しました(国立がん研究センター発表)。国が、がん死亡率を減らすことを断念せざるを得なかった背景に、検診による早期発見、早期治療があまり進んでいないことが挙げられます。当然ですが、発見が遅れてしまうと生存率は著しく低くなってしまうのです。限局性の大腸がんの場合では、早期発見での5年生存率は約95%ですが、発見が遅れて遠隔転移してしまうと5年生存率は15%未満にまで激減します。胃がんに至っては、遠隔転移したがんの5年生存率はわずか約5%という低率です。

これらの数値は、がんが発症しても「ほぼ助かる」と見込めるのが、「限局性の早期がん」に限られるということを如実に物語っています。

また医療が時々刻々と進歩を遂げても、我が国における「遠隔転移がん」の生存率は一向に上がる兆しがありません。最近では広く知られるようになってきましたが、その原因は日本の保険診療で受けられる「標準的がん治療の限界」にあるのです。

がん細胞が様々な部位に転移し散らばってしまった進行がんは、手術や放射線などの局所療法では治療できない全身性の疾患となります。故に、標準治療の範囲内で全身に散らばったがん細胞と闘うとなると、自ずと抗がん剤治療を選択することになります。しかし、抗がん剤で、全身のがん細胞をくまなく取り除き、根治に持ち込むことは理論上不可能です。抗がん剤は、がん細胞だけでなく体の中にもともと備わっているがんと闘う細胞まで殺してしまう薬剤です。しかもその治療中にも薬の効かない「薬剤耐性」を持つがん細胞が生き残るため、次々に強い抗がん剤に切り替えても、やがて効かなくなっていくのです。

進行がんを相手にすると、標準治療は延命手段にしかなりえません。では、どうすれば、全身に散らばったがんの進行を食い止めることができるのでしょうか。

そこで重要になるのが、本書のテーマとなる保険診療と自由診療を組み合わせた、「がん治療設計」です。

私はこれまでがん専門医として、様々なステージのがん患者を治療してきました。全身に散らばったがんを完治させるためには、標準治療の限界を超えた全身治療を取り入れることが必須となります。今、世界では標準治療に対する反省から生まれた「分子標的薬」と呼ばれるタイプの抗がん剤が次々と開発されています。その特徴は、従来ほとんど顧慮されなかった免疫を重視し、最終的に患者さん自身の免疫力でがんを治そうという発想が取り入れられているところにあります。しかし、ほとんどのがんでは保険適用にならないため、保険診療を行なっている大病院の医師は、処方することができません。私が実施しているANK療法も同様です。そのため、患者さんは標準治療をやり尽くしてから最終手段としてこうした先端医療にたどり着く方が大半です。ところが、それではすでに抗がん剤治療によって免疫が損なわれていて、手遅れになるケースが多いのです。

これまでの治療経験の中で断言できるのは、がん克服のためには、診断後の早い段階であらゆる治療法を考慮し、病態に合わせた最適の組み合わせを考えるべきだということです。それこそが、命を救う「がん治療設計」となるのです。

本書では、保険診療と先端医療を駆使して、進行がん完治をめざすがん治療設計とはどのようなものかを、わかりやすく解説していきます。

進行がんの患者さんが、「延命」でなく、「完治」をめざす治療を選択できるようになるには、自由診療も視野に入れた柔軟な「治療設計」が必要です。それが、ひいては国民のがん死亡率を劇的に下げることにもつながります。

がんとの闘いでは、早期の柔軟な治療設計がカギを握る――。そのことを多くの方に知っていただき、大事な命を取り返すことに役立てていただければ、医師としてこれに勝る喜びはありません。

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