ウェルネスコラム「保険診療+先端医療 完治をめざす「がん治療設計」 おわりに」

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保険診療+先端医療 完治をめざす「がん治療設計」 おわりに

おわりに

現在、我が国の国民医療費は年間およそ40兆円に上り、しかも年々1兆円ずつ増加を続けています。この状態を放置していると、日本は大変なことになります。

保険診療+先端医療  完治をめざす「がん治療設計」

保険診療+先端医療
完治をめざす「がん治療設計」

国民皆保険制度の恩恵で国民が等しく医療を受けられることはよいのですが、国庫への負担が驚くべき額になっていることを国民は理解しなければならないでしょう。増え続ける医療費は健康保険だけではまかないきれず、実際には税金から約4割の医療費が補填されています。現状ではそれが16兆円にも上る計算になるのです。

これは、一般会計予算(96兆円)のうち、歳入に占める所得税分にほぼ匹敵し、歳出の赤字に当たる国債費(約23.5兆円)の7割ほどに相当します。それこそ尋常な額ではありません。

医療費のムダを削れという声は当然ありますが、高齢者では、命に関わるがんや心臓病、脳卒中の治療にかかる費用が4割に達しており、そう簡単には削減できないと言われています。ジェネリック医薬品への転換も謳われていますが、この論はまったく事の本質を外しており、大きな期待はかけられません。

そんな財政事情もあって、がん治療では数十年前に形の出来上がった三大療法中心の標準治療が保険適用となっており、新しい分子標的薬や粒子線治療などには予算が回っていないのが現状なのです。

最近、市場に出回っている抗がん剤は、ほとんどが分子標的薬であることをご存じでしょうか。分子標的薬は殺細胞剤にとって代わる抗がん剤として脚光を浴びています。

小野製品が開発した分子標的薬ニボルマブはチェックポイントを阻害薬という新たな免疫療法剤として世界中から注目される抗がん剤です。しかし、ニボルマブの投与ではがんは完治しないのです。延命しか望めません。しかるにニボルマブを1年間投与すると数千万円かかります。こんな抗がん剤が次々と発売されたら国家財政は間違いなく破綻します。

では、私たちには何ができるのでしょうか。

治療より予防、そして同じ病気なら簡単に済む軽症のうちに治療をすることです。まずは国民全体として病気の予防に努め、医療費がかからない健康な人を増やすことが最も大切でしょう。生活習慣を正し、さらに生活習慣病予防への有用性が明らかな栄養を補ったりすることで、血管や粘膜の老化を防ぐのです。

そうした取り組みは間違いなく、三大死因となっているがん、心臓病、脳卒中の罹患を減らすはずです。私はそのためにメディカルサプリメントも開発しましたが、その経緯や効果は別の書籍に書きましたので、関心のある方はお読みください(『一生がんにならない体をつくる』という本です)。

現在、一般的な保険診療費の窓口負担は原則3割とされていますが、実際の患者負担は1割程度だと推計されています。多額の治療費がかかるがんなどでは、様々な負担軽減措置も取られているためです。まず治療費を減らさないことには、小手先で薬の置き換えをしてもほとんど意味はありません。

ですから、次に大事なのは、がんの早期発見・早期治療の徹底です。これには内視鏡検査も選択肢に入れた検診の普及が役立ちます。

実は進行がんの治療には、がんそのものだけでなく合併症の治療にも多額の費用がかかるのです。私が10年ほど前に個人的に後輩に調べてもらったところ、進行した大腸がんで亡くなる方は平均2年間治療を受け、およそ2000万円の医療費がかかっていることがわかりました。1年間に約1000万円。これは患者様の自己負担額ではなく国民全体でかかる費用です。

この金額は現在もほぼ同じと思われますから、国全体で年間約37万人(平成26年のがん死亡者推計数)に対して、およそ4兆円弱のがん医療費がかかっていると概算することもできるでしょう。多くの人のがんを早期がんの段階で食い止めれば、その全額ではないにしても相当な金額が削減できます。

そしてもう一つ、「がん治療のあり方を再考すべきである」というのが、私が本書で述べたかった考え方です。

保険診療だけでがん医療を組み立てようとすると、最終的に延命のための治療で体を壊し、合併症との果てなき闘いになってしまいます。しかし、自由診療の免疫治療も選択肢に加えれば、重篤な合併症に苦しむ人が減るだけでなく、これまで治らないとされてきた多くの患者様の「完治」さえ望めるようになります。

そうすれば、従来はQQLの低下から働けなくなっていた進行がんの患者様たちも、また元気になり、社会を支える働き手となることができます。医療費そのものが減るだけでなく、経済的にも社会の活力が高まるのです。

ぜひ多くの方に、視野を広げて、望ましいがん治療を考えていただきたく思います。本書の中で患者様の一人もおっしゃっていたように「知識は力」です。それは、がんから自分や家族の命を守るだけでなく、未来の子孫たちにこの豊かな国を引き継ぐことにもつながっているのです。

2015年11月吉日
医学博士 石井 光

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