コラム「分子標的薬の効果を引き出すのは医師の「さじ加減」」

コラム

書籍連載

【第4章】最新の治療法への強い探究心こそが、がんを克服するカギ
分子標的薬の効果を引き出すのは医師の「さじ加減」

分子標的薬の効果を引き出すのは医師の「さじ加減」

当クリニックでは、積極的に分子標的薬をANK免疫細胞療法と併用しています。理由は、ANK免疫細胞療法を求めてくる患者様の大半がステージⅢからⅣだからです。というより圧倒的にⅣが多いです。ステージⅣだと、体内に残存するがん細胞の数は軽く数百億を超え、1000億超も珍しくありません。

保険診療+先端医療  完治をめざす「がん治療設計」

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完治をめざす「がん治療設計」

がんとNK細胞の戦いは1対1です。1回のANK免疫細胞療法の培養で増殖すると最終的に約100億個になります。仮にそれをすべて同時に人体に投与したらどうなるでしょうか。

免疫刺激が強過ぎ、大きな腫瘍が一気に壊死を起こすので、ICUの中で体液コントロールを行なわないと生死の危険を伴います。実際、米国政府研究機関が行なったLAK療法は、ICUを占拠し続けて行なわれ、とんでもないコストがかかったのです。だから、ANK免疫細胞療法では、クリニックへの通院でも安全に行なえるように、1回に投与するNK細胞の数は5億~10億個となります。それに対して、相手のがん細胞の数が少なくとも数百億ではNK細胞が攻撃している間に攻撃されないがんは増殖するので、非常に不利な闘いになります。

それをなんとかしようと2012年から積極的に分子標的薬を併用することにして効果を上げてきました。当クリニックで主に使用する分子標的薬は、ハーセプチン®とアービタックス®です。

この2剤はいずれも抗体医薬品で、ADCC活性があります。ハーセプチン®は保険適用では、胃がん、乳がんです。アービタックス®は大腸がんです。しかし、固形がんのがん細胞の表面にはHERファミリーが生えていることが確認されています。HERファミリーは現在HER1からHER4まで存在がわかっています。HER1はEGFRともいい、それに対する薬剤はアービタックス®です。HER2に対する薬剤はハーセプチン®です。転移を繰り返す固形がんの細胞の表面には必ずこれらのレセプターがたくさん生えていて、人体から増殖因子を取り込んで増殖を繰り返すのです。だから保険適用では胃がん、乳がん、大腸がんにしか使用できませんが、私は自由診療を行なっているので、あらゆる固形がんに用いています。

ハーセプチン®もアービタックス®もそれぞれのレセプターに取り付いて増殖因子の取り込みを抑えてがんの増殖を抑制するだけでなく、ADCC活性によってNK細胞の活性を数倍に引き上げます。私は、ここに着目したのです。

ただし、全例のがん患者様に使用するわけではありません。まず心機能を測定して一定の条件をクリアしなければなりません。それから血中HER2を測定して9以上なければ使用しません。HER2は健常者でも存在して平均のピークが9なのでそれ以下では使用しません。ハーセプチン®を使用して効果が出てくるとHER2が下がってきますが、HER2が下がってもマーカーが下がらない場合があります。

あくまでも私の推測ですが、がんはずるがしこいのでハーセプチン®で攻撃するとHER2を引っ込めて別のレセプターを出すのではないかと考えハーセプチン®の代わりにアービタックス®を投与するとマーカーが再び下降することがあります。

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