ウェルネスコラム「保険診療が優れているというのは幻想にすぎない」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第2章】主治医の知識と経験の不足が、がん患者の寿命を縮める
保険診療が優れているというのは幻想にすぎない

がん死亡率が低下する欧米で主流となっている「新しい抗がん剤」

がんの治療は進歩しており、助かる人がだんだん増えている。漠然とそういうイメージを抱いている人は、比較的多いのではないかと思います。特に、自分や身内が健康なうちはそう思う人が多いようです。

保険診療+先端医療  完治をめざす「がん治療設計」

保険診療+先端医療
完治をめざす「がん治療設計」

しかし、「がんは治るようになっているはず」と思い込んでいた人が、いったんがんと向き合うと、目の前に意外と厳しい現実があることに打ちのめされるはずです。

日本でのがん死亡率(人口10万人対)をみると290.3と世界一高い水準になっています(厚生労働省『平成25年我が国の人口動態』)。これは、国民の3人に1人はがんで亡くなる計算です。

それに対して欧米では、がんになる人も、がんで亡くなる人も減ってきています。特に1990年頃までがん死亡率が日本と同程度だったアメリカでは、ここ20年ほどの間にがんで亡くなる人が減り続け、ピーク時に比べて20%ほど低下しています。

日本人男性の人口10万人に対する死亡率が354.6人(2013年)であるのに対して、アメリカ人男性では197.1人(2007年)と、大きな差があることがわかります。

アメリカでがん死亡率が下がってきた理由として、野菜不足・高脂肪の食事が目覚ましく改善されたことや、喫煙率の大幅な減少などが一般に挙げられています。

それと同時に見逃せないのが、治療法そのものも変わってきたという点です。

実はアメリカでは、日本で主流を占めている殺細胞剤がすでに見限られ、分子標的薬という新しいタイプの抗がん剤が化学療法の主流になっています。新薬の開発においても、市場シェアにおいても、今や分子標的薬が主役です。

1990年代から続々と登場した分子標的薬は、欧米の大手製薬会社の主力商品となり、今では売上の半分以上を占めるに至っています。

この薬は、がん細胞だけを狙い撃つ薬は作れないという事実に立脚し、がんを殺すことを諦めたところからスタートしています。細胞の増殖を促す信号をブロックすることでがん細胞の増殖を抑え、がんの進行を食い止めることに主眼を置いています。

副作用として正常細胞の増殖も抑制されてしまうものの、免疫細胞がダメージを受けないので免疫力を大きく損ねることもないことが大きな特徴です。

この薬の開発については裏話があります。

アメリカでは、つい最近、オバマケアという形で国民皆保険に近い医療保険制度が成立しました。しかし、制度の主体となっているのはあくまで民間保険会社で、医療・製薬業界に絶大な影響力を持っています。そのアメリカの保険会社の首脳が、1980年代前半に、並み居る大手製薬会社の首脳にこう脅しをかけたというのです。

「がんの治療費がうなぎ上りになっている。死亡率も変わらない。このままなら治療費は払わない」

つまり抗がん剤への支払支払いを保険会社が拒否したら、製薬会社の経営が成り立ちません。そうして1990年代に、従来の殺細胞剤とは全くコンセプトの異なる分子標的薬が、がん治療の現場に投入されたのです。

日本の保険診療で使われている抗がん剤は、60年前から変わらない

対する我が国では、新しいタイプの抗がん剤=分子標的薬がほとんど保険適用になっていないことから使用は一部にとどまり、殺細胞剤が主流の状況は一向に変わる気配がありません。

この違いの一因は、両国の医療制度の違いにもあります。

我が国の国民皆保険制度では、誰もが一定の医療を等しく保障されており、安心して病院に行くことができます。アメリカでは、自分が契約している保険の範囲でしか治療を受けられません。社会背景も国民の考え方も違うので、どちらが優れているという話ではありませんが、日本の公的医療保険は堅持すべき制度です。

ただし日本では、この優れた制度が、がん治療に限っては仇になっているのではないでしょうか。国民は、水や空気のように、最適な医療が提供されていると感じています。がん治療においても、多くの人の念頭にあるのは「保険診療だけ」のようです。

ところが、保険診療に組み込まれている治療は、十年一日のごとく進歩していません。「治療法は日々進歩し、がんはどんどん治るようになっている」という患者予備軍の期待とは正反対と言ってもいいのが現状です。それにもかかわらず、ほとんどのがん患者様は、最適な医療が提供されていると信じて、保険診療の病院を受診しています。

この画一的すぎるがん治療の選び方に、大きな問題があるのです。

その三大療法のうち、手術に関しては、治療の際の傷口を最小限にとどめることができる内視鏡手術や腹腔鏡手術といった手術方法が普及し、精度の高いロボット手術が開発されるなど、様々な進化が見られます。また、放射線療法でも、ピンポイント照射やサイバーナイフ、トモセラピーなど、技法が進歩しています。

しかし、化学療法においては、60年前に開発された殺細胞剤が、ほとんどそのまま使われ続けています。

保険診療の標準治療で使われている分子標的薬はごく一部で、しかも免疫に重きを置いた分子標的薬とは正反対の薬剤設計で作られている殺細胞剤との併用が原則です。分子標的薬を欧米の医師のように使いこなすことは、日本の保険診療医にはできないのです。

世界的に免疫を重視したがん治療が模索されている現在、免疫にダメージを与える古い治療法しか持たない標準治療だけで進行がんに立ち向かうのは、時代遅れだと言わざるを得ません。

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