ウェルネスコラム「がんは免疫病。完治するには免疫力の回復が必要」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第1章】手術・抗がん剤・放射線治療・・・三大療法のゴールは、「完治」ではなく「延命」
がんは免疫病。完治するには免疫力の回復が必要

がんだけを殺す薬は作れない

保険診療において飛び散るがんへの唯一の対抗策となっている殺細胞剤は、がん細胞だけを狙い撃つことができず、正常な細胞も巻き添えにしてしまいます。そのため、標準治療だけでがんを一掃することには限界があります。
なぜ、これほどまでに医療技術が進展している中で、がんだけを狙い撃つ薬ができないのでしょうか。それは、がん細胞がもともと自分自身の細胞であることと関係しています。

保険診療+先端医療  完治をめざす「がん治療設計」

保険診療+先端医療
完治をめざす「がん治療設計」

外界の異生物である細菌には、人体内の細胞には存在しない「表面物質」があります。抗生物質が殺菌作用を発揮するのは、細菌に特有の表面物質を標的にして狙い撃つからです。しかし、がん細胞は体を蝕む恐ろしい性質に変異しているとはいえ、もともとは自分自身の細胞です。そのため正常細胞には存在しない"がん細胞特有の物質"はありません。

つまり、薬でがん細胞だけを叩こうにも、その標的となるような表面物質はなく、残念ながらがん細胞だけを狙い撃ちできる薬は今のところ開発されていません。

過去に、がん細胞だけを狙い撃つ薬の開発が何度も試みられてきました。その一つが、血中に表れる物質からがんを見つける「腫瘍マーカー」を標的とする薬です。しかし、どんなに腫瘍マーカーを標的にする薬を作っても、正常細胞に対するダメージは避けられませんでした。腫瘍マーカーとされる物質は、がんが発症することで出現したものではなかったからです。この物質はがん細胞にも正常細胞の表面にも存在しており、炎症等によって、血液中に溶け出したものでした。

他方、がん遺伝子の発見は、がんの診断や治療に大変革をもたらすと期待され、1980年代の終わり頃からさかんに研究されました。

ところが、がん遺伝子と思われたものは、正常細胞にも存在していることが後日判明します。がん細胞と正常細胞では、主に細胞増殖に関係する遺伝子の活動量が「微妙」に異なるだけなのです。そのことが明らかになり、結果的に、増殖信号をブロックする分子標的薬の開発につながりましたが、正常細胞の増殖にもブレーキをかけてしまうため、シンプルにがん細胞だけを狙い撃つことはできません。

私たちの体の中では、健康なときでも常にがん細胞が生まれては消えるということが繰り返されています。がん細胞が生まれても発がんしないのは、免疫ががん細胞を見つけ次第に殺し、がんの成長を防いでいるおかげです。

がん細胞だけを狙い撃ちできる薬は存在しない

免疫細胞が、がん細胞と正常細胞を見分ける際も、がん細胞に特有の物質を見ているのではなく、がん細胞と正常細胞、どちらにも存在する物質の量的なバランスや組み合わせ、分布パターンなどの違いを総合的に見ていることがわかってきました。

この免疫の働きが弱まるとがん細胞の勢力が勝り、発がんしてしまうのです。
がんだけを殺す薬はいまだに作ることができませんが、私たちの体の中には免疫という優れたシステムが生まれながらに備わっているのです。

感染症に対する免疫と、がんを殺す免疫は別物

一口に免疫といっても、感染症に対する免疫と、がんに対する免疫では、種類が全く異なります。免疫は、敵によって違う部隊を動員するのです。

感染症に対する免疫は、病原細菌が異常に増殖すると、白血球のなかの「樹状細胞」が察知し、同じく白血球のキラーT細胞やB細胞に情報を伝えます。そしてB細胞の作る抗体を浴びせて細菌の動きを止めて、掃除係の免疫細胞に処理させます。

また、ウイルスが大挙して侵入した場合は、樹状細胞の知らせを受けたヘルパーT細胞がCTL(キラーT細胞集団)を呼び寄せ、ウイルスに感染した細胞を1つずつ処分させます。T細胞は、非常に幅広い働きを受け持つ免疫細胞のグループですが、ひとつひとつのT細胞が受け持つ役割は、それぞれ一つだけです。

ウイルス感染細胞を攻撃するCTLは、自分が認識・攻撃できる1つの物質に反応します。ある意味では無差別攻撃のようなものであり、実際にCTLが正常細胞を攻撃してしまうことは珍しくありません。

免疫が持っている力をがん治療に応用する研究が始まったときに、最初に注目されたのが、このCTLでした。一部のCTLが、特定のがん細胞を攻撃することが確認されていたからです。しかし、この場合も、相手をがん細胞だと認識して攻撃しているわけではなく、自分が担当する一つの標的物質を目印にして、襲いかかっているだけでした。そのためがん細胞が、免疫の目をかいくぐろうとして標的物質をしまうと、CTLはまったく反応しなくなり、攻撃をやめてしまいます。

感染症に対する免疫

最近、CTLを体内で誘導させることでがん細胞を攻撃する「樹状細胞療法」が話題になりました。しかし、樹状細胞の本来の役割は、感染症やウイルスに反応するものであることから、がん治療への応用には無理があります。

実際、大きな話題になったわりには樹状細胞療法や樹状細胞ワクチン療法といった免疫療法は、ほとんど実績を上げていません。

CTLは、あくまでも外部から侵入してきた病原菌などの異物による危険を取り除くことが大きな役割です。がんに対する免疫とは性質が異なり、限定的、補助的な働きにとどまっています。

がん細胞を殺す、免疫の主役はNK細胞

がんは、もともとは自分の細胞が変質したものです。したがって、感染症に対する免疫は、がんに対しては反応しません。

では、がん細胞に対する免疫が持っている働きとはどのようなものなのでしょうか。
がん細胞に対する免疫は、腫瘍免疫と言います。腫瘍免疫は、がんを見つけしだい攻撃し、すぐに消している免疫です。

現在定説となっている「免疫監視機構」説では、「がん細胞は健康な人の体内でも日常的に発生している。その数は一日に数千個とも推計されるが、NK細胞が全身をパトロール(免疫監視)し、見つけしだい殺しているので、がんにならない」と言われています。

この免疫監視機構説で指摘されているNK細胞こそが、がんに対抗できる免疫です。

免疫の研究者たちによく知られていた現象があります。その現象とは、健康な人の血液にがん細胞を混ぜると、がんの種類を問わず、数日でがん細胞が消えてしまうというものです。つまり、健康な人の血液の中には、がんを殺す何者かがいるわけです。それがNK細胞でした。

NK細胞は、どのようながんに対しても正常細胞と区別して、がん細胞にだけ襲いかかる性質を持っています。CTLと異なり、正常細胞を殺してしまうようなことはありません。
がん細胞には様々な特徴があります。その違いは、細胞の表面に発現している物質の量や分布バランスです。細胞の表面には、無数の綿毛のように糖質、たんぱく質のひげが生えているのです。そのバランスから異常を察知し、がん細胞だと知るやいなや、NK細胞はがん細胞にパーフォリンという物質(槍)で穴を開け、アポトーシス(自爆)に追い込むグランザイムという物質(爆弾)を注入します。するとがん細胞は崩壊し、消えていくのです。

NK細胞が体内に抱えているこれら攻撃物質の量も、CTLとは比べ物にならないほど多く、数十倍、数百倍に上ります。

健康な人の体内にいるNK細胞は、がん細胞の勢いを上回る状態=NK活性が高い状態にあります。

NK細胞が自らの体から何十種類ものセンサーを突き出して、異常か正常かを判断します。どんながん細胞と出合っても、必ずその異常性を見分け、瞬時に攻撃するのがNK細胞の特徴です。

CTLとNK細胞のがん細胞に対する攻撃の違い

体内には、およそ1000億個のNK細胞がいると推定されています。この免疫細胞が、がん細胞を狙い撃ちするがん退治の主役なのです。

がん治療で回復させるべきはNK細胞の活性

NK細胞は誰の体内にもいるのに、どうしてがんになる人が後を絶たないのでしょうか。その理由は、NK細胞の活性が低下しているからです。

その証拠に、がん患者が、抗がん剤の副作用などで、間質性肺炎を発症した場合など、強い免疫抑制の投与を行なうと、がんが爆発的に増殖してしまうことがあることが知られています。

健康な人はNK活性が高く、NK細胞の勢いががんを圧倒しています。しかし、なんらかの理由で免疫力が低下すると、NK細胞の勢いをがん細胞が上回ることがあり、そこにがんが付け入ってくるのです。

様々な要因で、がん細胞が免疫力を上回ることが考えられています。大病や強い精神的ストレス、環境汚染、慢性の胃炎や肝炎のような炎症の持続も、免疫システムに負荷をかける要因になります。

そして、がんという病気の本質とも言えるのが「免疫抑制」です。がん細胞集団は、NK細胞よりも優位に立つと、ニセの信号で免疫を撹乱し、NK細胞の活性をさらに下げようと働きかけてくるのです。

その攻撃に負けて活性が著しく低下すると、NK細胞は眠ったような状態になってしまい、もはやがん細胞を認識したり、攻撃したりできなくなります。がんがつくる異常に強い免疫抑制下では、免疫細胞もだまされてお互いに強い免疫抑制をかけ合うようになります。

このがんの特性は、進行がんに挑むときに決して無視できない部分です。免疫抑制こそ、がんという病気の正体だと言っても過言ではありません。

進行がんを打ち負かそうと思うなら、がんの免疫抑制に支配された自分自身の免疫システムを、本来の正常な状態に回復する必要があります。

ところが、標準治療の柱である三大療法は、いずれも免疫にダメージを与える治療法です。保険診療には免疫抑制を跳ね返すメニューが見当たらないのです。がんに抑圧されているNK細胞の活性を高めることに目を向けなければなりません。

そのためには、自由診療も検討し、特に免疫療法をがんとの闘いに取り入れることが理にかなっていると言えるのです。

【次のページ】決まったレールの上を走っていく標準治療

【前のページ】がんが再発・転移してしまうと標準治療は無...

目次へもどる

がんの相談センター

ご相談・資料請求はこちら