ウェルネスコラム「飛び散っていない早期がんは標準治療でほぼ治る」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第1章】手術・抗がん剤・放射線治療・・・三大療法のゴールは、「完治」ではなく「延命」
飛び散っていない早期がんは標準治療でほぼ治る

局所のがんは「取れば助かる」人が多い

日本人のがん死亡者数は年々増え続けています。「死因別死亡数推移  平成25年人口動態統計」(厚生労働省)では、1997年に約27万人だったがんによる死亡者数が、2013年には約36万人に増加。約20年の間、右肩上がりの傾向が続いているのです。
がんによる死亡者数が増えている一方で、がんを克服できる人も少なくありません。助かる人と助からない人の違い ー その大きな要因の一つが「がんの種類」です。
がんは、大きく二つに分けることができます。まとまりのよい「局所のがん」と、まとまりが悪く周辺に散らばりやすい性質を持つ「飛び散るがん」です。
当院では、年間3,000件に及ぶ内視鏡検査を行っています。その知見から言えるのは、「早期がん」と「進行がん」の違いが、この「局所のがん」と「飛び散るがん」の区分とほぼ重なるということです。

保険診療+先端医療  完治をめざす「がん治療設計」

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完治をめざす「がん治療設計」

がんによる死亡者数は増え続けている

局所のがんとは、具体的には「発症した部位だけに固まっているがん」のことを言います。早期がんのほとんどが、このタイプです。局所のがんであれば、手術や放射線治療でがん細胞を根こそぎ取り去ることができます。
がんが発症しやすいと言われている食道、胃、大腸などの消化器系の臓器にできる早期がんは、上皮内がんと呼ばれ、粘膜(消化管上皮)の中にとどまっています。そうした小さな早期がんは、内視鏡や手術で周辺粘膜ごと取るだけでほぼ治ります。その後に転移が見つかる割合も5%以下と非常に低い確率です。局所のがんであれば、たとえ発症したとしても助かる確率はかなり高いと言えるでしょう。

飛び散るがんは、5年生存率が低くなる

厄介なのが「飛び散るがん」です。このタイプのがんは進行がんに見られるもので、局所のがんとは異なり、「発症した部位以外のところにもがん細胞が浸食した状態のがん」を指します。
消化管粘膜の下には、粘膜下層、筋層、漿膜しょうまくといった組織があります。そこまで食い込んでしまったがんを浸潤がんと言います。浸潤がんになると、さらに他の臓器にまで食い込んでいったり、がん細胞がリンパ液や血液に乗って散らばったりします。
こうなると、がんと取るだけで治すのは困難です。

胃粘膜の断面のイメージ

全身に散ってしまったがん細胞を根絶しなければ、残ったがん細胞がいつまた体のどこに腫瘍をつくるかわかりません。
局所のがんと飛び散るがんでは5年生存率が大きく異なる、ということを示すデータを紹介しましょう。表の「限局」は局所のがんを、「領域」はがんが発症しているリンパ節や隣の臓器に浸潤しているがんを、「遠隔」はがんが発症している臓器から離れたところに転移しているがんを示しています。

がん患者の5年生存率

領域、遠隔と飛び散る範囲が広範囲になるほど急激に5年生存率は低くなっていくのです。
当院が健診を行っている消化器系の代表的ながんである胃がんは、「限局」の5年生存率が95・4%と高い割合を示しています。一方、「領域」では45.6%と大幅に低下しており、「遠隔」になるとわずか5.5%です。
このような傾向は、胃に限らずほとんどの部位で見られます。
このデータは、「全身に散らばったがん」を根絶することがいかに難しいかを如実に物語っていると言えるでしょう。
「がんは早期発見、早期治療が重要」という言葉の裏づけには、こうしたデータがあるのです。

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