ウェルネスコラム「はじめに」

ウェルネスコラム

書籍連載

はじめに

一生のうちに、がんになるかならないかで、その人の人生や健康寿命、生活は大きく違ったものになります。ひと度がんと診断されれば、その後は抗がん剤や手術など、精神的にも肉体的にも苦痛を伴う治療の日々が待ち受けているからです。がんになったご本人が受けるショックはもとより、ご家族や友人、周囲の方々に与える苦痛や心労は、実際に経験した人でなければ分からないものがあるでしょう。

一生がんにならない体をつくる

一生がんにならない体をつくる

がんは現在、日本国民の死亡原因の第1位、しかも、がんによる死亡数は全体の約3割を占め、国民のおよそ2人に1人ががんになるとされています。

国もこうした事態を重く受け止め、がんの早期発見の推進や医療機関の整備、「外科手術」「放射線」「抗がん剤」の三大療法を中心とした、早期治療の体制を整えてきました。

しかし、残念なことに、がんと診断された人の「5年生存率」は一向に改善されていないのが現状です。遠隔転移しているがん患者の5年生存率は、たった7%です。今こうしている間にも、がんと診断された人の4割が、5年以内に亡くなるという悲劇が繰り返されているのです。

このような悲劇をなくそうと私は、長年、消化器専門医として、また、がん免疫療法の専門医として、胃がんや大腸がんの早期発見・早期治療に努めてきました。これらのがんは、早期のうちに治療すれば5年生存率が9割以上になります。がん治療は、早ければ早いほど有利であることを痛感していますが、本当は、もっと大事なことがあります。言い古された言葉ではありますが、「治療よりも予防が肝要」、がんにならない体をつくることができれば、治療の必要もないのです。

それではどうすれば、がんにならない体をつくることができるのでしょうか。

がんの発症に遺伝子が関与していて、がんの家系に生まれた人は、がんになる確率が高いと言われます。しかし、遺伝子の異常だけで発がんするのではありません。一生がんにならないためには、まずはどうしたらがんになるのかを知ることが必要です。その逆の生き方をすればいいのですから。

そもそも、がんの発症には、体内の免疫の状態が密接に関わっています。そして体内の免疫力は、老化が原因で低下していきます。しかし、老化ががんのリスクだといっても、加齢自体は誰にも防げません。「老化に伴う何がいけないのか」を見極める必要があるのです。

よく知られている、がんが発症するメカニズムとして、活性酸素による酸化ストレスが影響している、と聞いたことのある人は多いでしょう。そのほかにも遺伝子に傷がつき、細胞のがん化を促すという理屈をご存じの人も多いかもしれません。

遺伝子に傷がつくのは、分かりやすく言うと「そこに炎症が生じるから」です。私自身の専門分野で言えば、老化が進むと胃の粘膜に萎縮性の炎症が増えてきます。その炎症が、がんの温床になっているのです。

そこで問題になるのは、「老化によって粘膜が萎縮してしまうと、もう元には戻らないのか」です。これについては、多くの患者さんを診てきた経験上、元に戻ることもあると断言できます。老化に伴って、確かに胃粘膜は炎症を起こしやすい状態になるのですが、その状態は実は、元に戻したり、防いだりすることもできるのです。

胃粘膜の炎症は、老化だけでなく刺激物の常食によっても引き起こされます。ほかにも喫煙によって気道の粘膜に炎症が起これば、肺がんにつながります。つまり、粘膜の炎症を防ぐことが、がん予防に直結するのです。

そこで本コラムでは、どうすれば粘膜の炎症を防ぐことができるのか、炎症を元に戻すにはどうすればよいのか、という切り口を中心に「一生がんにならない体のつくり方」を解説していきます。また、がんになる、ならないを分けるのは、最終的には免疫力の差にあります。粘膜の炎症を予防することは、免疫力を高めることにも関係があるのです。がんの予防に欠かせない免疫力を高める具体的な方法についても、詳しく紹介していきます。

本コラムがきっかけとなり一人でも多くの方が、がんにならない体を手に入れることができたらこれに勝る喜びはありません。

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