ウェルネスコラム「"予兆"の段階でがんの芽を摘む」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第3章】がんの予兆をつかむことが、予防の第一歩
"予兆"の段階でがんの芽を摘む

腸上皮化生は胃薬で治療できる

慢性萎縮性胃炎で、特に糜爛(びらん)の伴うものだと、腸上皮化生をもっている場合がけっこうあります。しかし、これは生検(生体検査)をしないと分かりません。そこで、内視鏡で組織を採取し、顕微鏡で腸上皮化生を見つけるわけです。

一生がんにならない体をつくる

一生がんにならない体をつくる

前がん状態に当たる腸上皮化生は、胃粘膜の萎縮が進んでから、それに何年も遅れて生じます。胃炎があり、DNAが傷害されて変異を繰り返していると、ある日、突然別の細胞になってしまう。しかし、それにはある程度時間がかかることが分かっています。

しかも、それが一巻の終わりではなくて、そこからさらに進行してから胃がんになるということがはっきり分かっています。逆に言えば、それががん細胞にならないうちに、なるべく早く歯止めをかければ胃がんになるリスクを低下させることができます。

私のクリニックでも、腸上皮化生の見つかった患者様には胃炎の薬を処方しています。処方した薬を飲んでいただき、半年後にまた内視鏡検査をして、腸上皮化生ないし糜爛が治っていれば、そこで治療は終了です。治っていなければ、さらに服薬を継続していただきます。そういう形で治療すると、かなりの確率で腸上皮化生は治ります。

腸上皮化生からがんが発生することは明らかなので、腸上皮化生が消滅すれば、胃がんにはなりません。この治療は、すなわち胃がんの予防なのです。

胃酸の分泌を抑える薬と胃粘膜を修復する薬で胃炎を治す

胃炎の薬には攻撃因子系のものと防御因子系のものがあります。胃がんの予防を考える場合は、防御因子系の薬剤の役割が重要になります。

防御因子系の薬剤は、主に胃の粘膜を保護する薬です。それに対して、攻撃因子系薬剤というのは、胃酸を抑えるいわゆる制酸剤です。

現役世代だと、ストレスで胃炎や胃潰瘍になる人が多くいますが、そのようなケースの多くは胃酸過多です。ストレスを受けて神経の働きが乱れると、粘膜を守っている粘液の分泌が減り、逆に胃液の分泌が増えてしまいます。

この胃酸過多で粘膜に負担がかかると、傷ついて胃炎が生じたり、胃潰瘍になったりします。胃酸過多には、痛みのほかにも、酸っぱい呑酸(どんさん)がこみ上げるげっぷや、胸焼けなどの症状があります。しかし、胃酸過多があっても、こうした症状や痛みが出ない人もいます。慢性胃炎でも、胃酸過多はある程度あるわけです。

こうした胃炎に有効なのが、攻撃因子系の制酸剤です。有名なH2ブロッカーや、PPI(プロトンポンプインヒビター)という薬がこれに当たります。ただし、慢性胃炎の場合は、胃酸の分泌を抑えるといっても、かなりマイルドな薬を処方します。

また、高齢の方で、胃粘膜の萎縮がO-2とかO-3になっている場合、胃酸の分泌が減っているので、胃酸を抑える薬を処方する必要は少なくなります。

しかし、中高年までの現役世代では、防御因子系の薬と、攻撃因子系の薬を併用する必要があるのです。胃炎を治すには、やはりただ酸を抑えるのではなく、粘膜を保護し、修復する薬剤が有用です。

胃酸を抑える薬と、胃の粘膜を修復する薬。それを両方使いこなすことで、慢性胃炎の治療がうまくいき、ひいては胃がんの予防につながるのです。

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