ウェルネスコラム「内視鏡が映し出す、がんを生む生活習慣」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第1章】現代人の生活は、がん発症の危険因子で溢れている
内視鏡が映し出す、がんを生む生活習慣

"悪い習慣"で、胃も老化する

「内視鏡の画像には、その人の生活が映し出される」
そう言っても過言ではありません。内視鏡で胃の様子を見れば、その人がどんな生活を送っているか、おおよその見当がつくことが多いからです。つまり、健康寿命につながるようなよい習慣を保っているか、自分から病気をつくるような悪い習慣に染まっているかが、胃の内視鏡画像に映し出されてしまうのです。

一生がんにならない体をつくる

一生がんにならない体をつくる

私は、消化器専門医として、長年、患者さんの上部消化器官(食道・胃)や大腸を内視鏡で見てきています。その数は累計数万件にも及びます。そのため、年齢に応じた平均的な胃腸の状態が、画像として頭に叩き込まれているのです。

年齢を重ねていくと体のあちらこちらで老化が始まるのと同じように、胃でも老化が進んでいきます。「胃の老化」とは、粘膜が薄くなり、粘膜の下を通っている血管が透けて見えるような状態のことです。これを「胃粘膜の萎縮」と言います。
胃粘膜の萎縮は、だいたい20歳を過ぎたあたりから多くの人で始まります。そして、年齢を重ねるにつれて、萎縮の度合いが進んでいきます。この胃粘膜の萎縮が進行すると、やがて胃がんが発症する措置になるということが知られています。

ここでは簡単に述べるにとどめますが、胃の粘膜が萎縮すると、そこに胃炎が起こりやすくなり、炎症が続くとそこから「腸上皮化生」というがんの一歩手前の"前がん状態"というものが現れます。そこからすぐ発がんしたり、「腺腫」というプロセスを経てがん化するなど、粘膜の萎縮が"がんの発端"になるのです。

年々、低年齢化する「胃の老化」

老化による胃粘膜の萎縮は、自然現象ですからある程度は仕方がありません。ところが最近、内視鏡検査をしていると、胃粘膜の萎縮の低年齢化が散見されます。極端なケースでは、20歳代なのにもかかわらず、70歳代の平均ぐらい萎縮が進んでいる人もいるくらいです。以前にもまして、あらゆる世代で、年齢不相応に胃粘膜の萎縮が進んでいます。その主な原因は、なんでしょうか。

胃の粘膜が萎縮する原因には、主に4つのファクターが考えられます。それは、①加齢、②ピロリ菌に感染、③食事の偏り、④ストレスです。

①の加齢については、先に述べたとおりですが、②ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、酸性の強い胃に寄生する非常に珍しい菌です。アンモニアを出して胃酸を中和することで、胃粘膜で生き延びているのですが、このピロリ菌に感染していると、胃潰瘍や胃がんになるリスクが高まることが知られています。br 今のにほんでは、50歳代ぐらいまではピロリ菌の感染率は8割と高く、40歳代以下は低くなっています。50歳代以上で非常に感染率が高くなっている理由は、日本が「発展途上国」の頃に生まれ育った世代だからです。端的に言えば、生まれた年が東京オリンピックのあった昭和39(1964)年より前か後かで、ピロリ菌の感染率が大きく異なるのです。

日本が、戦後の焼け跡から本格的に立ち直ってきたのは、東京オリンピック頃からです。その頃を境に下水道が整備され、衛生面が一気に改善・発達してきました。
今では20歳代の感染率は約20%となり、国民全体のピロリ菌の感染率は、しだいに現象していくことが予想されています。結果的に、ピロリ菌に起因する胃がんリスクも減っていくことでしょう。

要するに、胃粘膜の萎縮の低年齢化を招いている原因は、加齢でもなく、ピロリ菌でもないということになります。むしろ、食事、ストレスといった日々のなにげない生活のなかに、がんになる体をつくる大きな原因を潜んでいるのです。

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