ウェルネスコラム「これからのがん治療」

ウェルネスコラム

書籍連載

第4章 再発・転移を防ぐことも重要な〝治療〟
これからのがん治療

ANK免疫細胞療法と標準治療

私は2012年の1月から、ANK免疫細胞療法に積極的に分子標的薬を併用して、大きな成果を認めました(それまではANK細胞単独の投与が基本でした)。また、抗がん剤(殺細胞剤)治療を受ける前にANK免疫細胞療法を行なうと、素晴らしい効果を認めることも経験しました。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

わが国はいまだに殺細胞剤全盛です。分子標的薬の使用は欧米ほど多くなく、しかも殺細胞剤を併用するという、本来の薬剤設計に反する投与方法が一般に行なわれています。こうした治療設計は、今後見直されていくべきだと考えています。

とはいえ、私は決して殺細胞剤を全否定する立場ではありません。殺細胞剤を上手に使用して、大きながんを縮小させてからANK細胞を投与する治療法もあります。また、殺細胞剤を投与する合間にANK免疫細胞療法を実施して免疫力を保つ、いわゆる合間治療を行なうこともあります。

しかし、標準治療に携わる医師が、最後は「治らなければホスピスに行きなさい」という、患者様を死に追いやるような選択肢しか持っていないのはおかしいと考えます。患者様だけでなく、がん治療に携わる医師も、適切なタイミングでANK免疫細胞療法を含む治療計画を考慮してほしいと思います。

ANK免疫細胞療法と分子標的薬のADCC活性

私は、長く実施してきたANK免疫細胞療法に、積極的に分子標的薬を併用してさらに目覚ましい効果を認め、これなら「進行がんでも一定の条件下で完治させられる」と確信しました。

ANK免疫細胞療法で、一度に体内に入れられるANK細胞(活性化したNK細胞)は5億~10億個の間です。それ以上入れると、40度以上の高熱が出て、患者様本人が耐えられなくなります。

しかし、NK細胞とがんの闘いは「1対1」といわれ、そうした闘いにおいては数が多いほうが有利です。ステージⅢからⅣだと、がん細胞の数は数百億から1000億個超になります。それに対して1回に投与できるNK細胞が5億から10億個では、NK細胞にとって不利な闘いになります。そのため、ANK単独治療では、ずっと不利な闘いを強いられてきました。

このままではいけない、なんとかしなくては......と、2011年の暮れから正月にかけての休み中、一生懸命考えました。考えた結果は次のようなものでした。

  1. ハーセプチン(ADCC活性を持つ分子標的薬)は、保険診療だと血中HER2が15.2以上でないと使用できない。しかし、私は自由診療だから、その使用基準にとらわれる必要はない。
  2. 血中HER2が15.2未満でも、がん細胞の表面にHER2がある程度生えていれば、ハーセプチンは有効なはずではないか。
  3. 私が検査した範囲では、血中HER2が15.2以上のがんは、進行がん全体の2割程度しかない。しかし、転移している進行がんは暴れるタイプのがんなので、15.2以下でもHER2が過剰発現していると考えてよいはずだ。
  4. だったら血中HER2が15.2以上というハードルは高すぎるので、独自の基準を設定すればいい。

このような結論を得て、血中HER2が9以上あれば積極的にハーセプチンを併用して、そのADCC活性に賭けてみることにしたのです。

保険診療では胃がん、乳がんだけにハーセプチンの使用が認められています。しかし、それは胃がん、乳がんだけ治験が行なわれたということであって、ハーセプチンは固形がんでHER2が生えていれば有効な薬です。これは重要なことで、血液のがんを除くすべての固形がんに対して、ハーセプチンは「使える武器」なのです。

がん手術は激減する可能性もある

現在、私が転移性進行がんのANK免疫細胞療法に分子標的薬を併用している割合は、相当数に達しています。それ以降、治療成績が上がっている手ごたえを感じています。

数年後には、現在治験中の画期的な分子標的薬が使えるようになるでしょう。そうすれば、ANK免疫細胞療法と分子標的薬の併用で、おそらく10年以内にがん治療のシーンが変貌する可能性があります。

かつて、私が医師になったころ胃潰瘍や十二指腸潰瘍で胃を切除していた時代がありました。現在では、胃切除手術といえばがんに決まっています。それはガスター10®などで知られるH2ブロッカーが1980年代に登場したためです。そのようなことが、がんでも起こるかもしれません。

がんにとっての特効薬は「ポテリジェント抗体」という分子標的薬です。抗体のポテリジェント化は、協和発酵キリンが持つ次世代のカギとなる技術です。現在、世界のメガファーマ(巨大医薬品メーカー)がライセンスを受けてポテリジェント抗体を開発中で、それが登場すると実験系で100倍になったというADCC活性を、ANK免疫細胞療法に活かすことができます。それによって、がんの手術が激減する可能性もあると、私は考えています。

【次のページ】ANK免疫細胞療法を"最終手段"と考えて...

【前のページ】分子標的薬も併用してNK細胞のがん殺傷力...

目次へもどる

がんの相談センター

ご相談・資料請求はこちら