ウェルネスコラム「分子標的薬も併用してNK細胞のがん殺傷力を強化」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第3章】自己免疫でがんを消すANK免疫細胞療法
分子標的薬も併用してNK細胞のがん殺傷力を強化

免疫重視の抗がん剤「分子標的薬」

しかし、なんといってもANK免疫細胞療法と併用して相性がよいのは、新しいタイプの抗がん剤である分子標的薬です。分子標的薬は、殺細胞剤のデメリットを克服すべく、数々の研究が重ねられた末に人類がたどり着いた、現在最先端のがん治療薬です。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

そういうと、不満を感じる人もいるかもしれません。「がん細胞を殺さない薬が、最先端なの?」と。もちろん、がん細胞だけを選択的に殺す薬ができれば、それはノーベル賞級の大発明でしょう。しかし、少なくとも今のところ、我々はがんを狙い撃ちする薬を作ることはできません。がん細胞だけに特有の物質が見つかっていないからです。がん細胞と正常細胞を見分けることができるのは、NK細胞だけ。それが現実なのです。

しかし、厳しい現実を正しく見ること、できないことを「できない」と明らかにすることも重要な科学の役目です。そうして何かをあきらめたなら、代わりに「何ができるのか」を考えればいいのです。分子標的薬の場合は、薬で正常細胞を巻き添えにしながらがんを殺すことはあきらめました。その代わり、その増殖にブレーキをかけるだけにとどめ、免疫を温存する道を選んだのです。そうすれば、少なくとも従来の抗がん剤のようにQOL(生活の質)を犠牲にすることはありません。

がんの増殖を抑制し、NK細胞を呼び寄せる

この「免疫重視」の薬と、免疫細胞療法の相性がよいのは当然といえば当然です。とくに相性がよいのは、ハーセプチンなどのADCC抗体医薬品(NK細胞を引きつけ、そのがん攻撃を助けるADCC活性を持つ抗体医薬品)です。私はがん治療では自由診療を行なっているので、保険適用(乳がんや胃がんの一部)にならないがんにも、積極的に抗体医薬品を使っています。

欧米では、乳がん・胃がん以外の固形がんについてもハーセプチンを投与して良い成績をあげています。但し血中HER2が過剰発現している場合です。

すでにおわかりのように、抗体医薬品というのは、一部のがん細胞が過剰に出している細胞表面物質に結合する分子標的薬です。抗体医薬品が標的としているのは、増殖を促す信号などを伝える信号伝達物質のレセプター(受容体)です。そのうち、進行がんが多量に発現しているHER2、EGFRの2つは、臨床上もとくに重要です。

これらは正常な細胞にも存在しますが(とくにEGFR)、がん細胞には異常に多くこのレセプターが生えています。そこで、そこに結合する抗体(抗体医薬品)を入れてやって、増殖信号を受け取れなくするのです。HER2に結合する抗体医薬品の代表はハーセプチン、EGFRにくっつくのはアービタックスなどです。

これらの薬に限らず、分子標的薬は細胞の増殖を促す信号をブロックしてがん細胞の活動にブレーキをかけます(中和活性)。さらに、ADCC活性を持つ抗体医薬品は、近くにいるNK細胞を引き寄せて結合します。そうすると、何が起こるでしょうか。抗体医薬品に引き寄せられたNK細胞は、そこにいるのが正常細胞なら殺さず、がん細胞なら殺してくれるのです。

最強の併用コンビ、ADCC抗体+ANK免疫細胞療法

問題は、がん患者様の体内では、異常に強い免疫抑制のために、がん細胞を識別・攻撃するNK細胞の活性がのきなみ下がっていることです。仮に活性の高いNK細胞がいたとしても、その数は決して多くはないでしょう。抗体医薬品のADCC活性をフルに活かすには、活性の高いNK細胞が大量にいることが望ましいのです。

そこでANK免疫細胞療法の出番となります。体外で活性を高め、攻撃力を強めたNK細胞を大量に体内に戻せば、単独でもがん細胞を強力に攻撃します。そのNK細胞をADCC抗体医薬品が呼び寄せれば、最大限効率よく、がん細胞をつぶしていくことができることになります。ですから、この場合の併用は、殺細胞剤とは違って「同時併用」です。

私も実際に、2012年1月からハーセプチンなどをANK免疫細胞療法に積極的に併用するようになってから、がん治療にさらに手ごたえを感じるようになりました。手術や殺細胞性化学療法剤を組み合わせずにANK免疫細胞療法だけで腫瘍が消えるようなケースも経験しましたが、その症例でもハーセプチンは併用しました。ANK免疫細胞療法とADCC抗体医薬品の併用は、まちがいなくがんの治療成績を上げると確信しています。

イメージとしては、NK細胞ががんを殺す速度が数倍になると思ってください。まさしくNK細胞がスナイパーになり、がんが増殖する前に殺し続けるのです。

私は、前にも述べたように、保険適用外のがんでも、HER2陽性ならハーセプチンを使い、EGFR陽性ならアービタックスを使います。それが本来の薬剤設計だからです。

また、抗体医薬品は通常、標的抗原(ハーセプチンの場合はHER2)の異常発現の度合いを検査で判定し、一定の基準値を超えていた場合に投与します。私もそうした目安は参考にしますが、経験的に「使ったほうがよい」と考える場合は、基準値以下でも自分の裁量で抗体医薬品をANK免疫細胞療法と併用します。

それが患者様を救える可能性を高めるなら、使える武器は総動員するのです。

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