ウェルネスコラム「化学療法とANK免疫細胞療法の併用」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第3章】自己免疫でがんを消す ANK免疫細胞療法
化学療法とANK免疫細胞療法の併用

殺細胞剤の薬剤耐性

化学療法や放射線治療では、一度に腫瘍を取り去る手術のように、一撃でがん組織を消し去ることはできません(標準治療ではない重粒子線などは除く)。抗がん剤(殺細胞剤)やX線は、分裂中の細胞を順番に殺していくことで、徐々に腫瘍を縮小させることを目指す手段です。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

ところが、殺細胞剤や放射線でがんを叩き続けていると、やがて、急に効果が現れなくなるときがきます。殺細胞剤でいえば、まったく薬が効かなくなるわけです。これが薬剤耐性といわれるものです。この現象は「がんが薬剤耐性を得る」とか「薬剤耐性が出現する」などと表現されます。がんは、自分の身を守るために、殺細胞剤や放射線に対する抵抗力までつけてしまうのです。

抗がん剤ががんをなくしきれない理由としては、薬剤耐性とともに、がん幹細胞の存在も挙げられます。腫瘍組織のなかには、がん細胞に対する割合は少ないものの、分裂・増殖がきわめて遅いがん幹細胞がいます。殺細胞剤で叩くと、がん細胞の総数は大きく減りますが、がん幹細胞は分裂が遅いためにほとんど生き残ります。治療を続けるうちに、これらも薬剤耐性を持ち始めると考えられます。

医師が恐れるのは、薬剤耐性を得たがんには勢いを増し、増殖を速める傾向があることです。いったん薬剤耐性が現れると、ほかの薬(セカンドライン、サードライン)の効きも悪くなってしまいます。がんが薬に耐性を得ると、標準治療では事実上、打つ手がなくなってしまうのです。

しかし、ANK免疫細胞療法は「薬」ではないので、薬剤耐性とは無縁です。そこで、化学療法が一定の効果を上げたあと薬剤耐性ができたと感じたらすぐANK免疫細胞療法が引き継ぎ、最後までがんを追いつめることを目指すといった方法が検討できるわけです。

薬剤耐カーブの図

化学療法後のANK免疫細胞療法

勢いよく増殖している腫瘍を、標準治療の抗がん剤(殺細胞剤)でなるべく縮小させ、薬剤耐性が現れたら、すぐさまANK免疫細胞療法に切り替えて叩く。それが化学療法とANK免疫細胞療法の基本的な併用方法です。その場合の手順を示すと、次のようになります。

  1. 1. できれば化学療法を始める前に、リンパ球を採取し、NK細胞の増殖・活性化を始めます。
  2. 2. 化学療法を開始します。
  3. 3. ANK細胞の培養ができても、化学療法の実施中に併用することは控え、そのまま培養センターで超低音凍結保存しておきます。化学療法だけを集中的に行ない、できるだけ腫瘍を縮小させます。
  4. 4. 薬剤耐性が現れたら、すぐに化学療法を終了し、ANK免疫細胞療法に切り替えます。

こうして、化学療法で縮小した腫瘍を、ANK免疫細胞療法で引き続き攻撃し、退縮・消失させることを目指します。最終的にがんが見えなくなり、再発しないレベルの免疫力を回復できればゴールです。

この際、重要なことは、化学療法を受ける前にリンパ球を採取することです。

このように、攻撃力の高い化学療法と、免疫系のANK免疫細胞療法を併用することで、患者様の経済的負担を抑えながら、より短期間でがんを効率よく減らす治療設計が可能になります。

化学療法後のANK免疫細胞療法の図

殺細胞剤とANK細胞の同時投与は無意味になる

ANK免疫細胞療法と抗がん剤(殺細胞剤)の併用は、がんを効率よく叩くためにANK免疫細胞療法医がしばしば推奨する選択肢です。ただし、あくまでもそれは「同時併用ではない」ことに留意してください。2つの治療法の作用が、お互いに矛盾しているからです。

殺細胞剤は、がん細胞の増殖(分裂)が速いことに着目し、その「分裂」のタイミングに標的を絞った薬です。分裂中の細胞を殺すことで、相対的にがん細胞のほうをより多く減らそうとする設計なのです。したがって、がんを叩くときに分裂中の正常細胞が巻き添えを食うことは、はなから必要悪として織り込んでいるのです。その際、造血作用をじゃまされる「骨髄抑制」という副作用もあいまって、体内にいるNK細胞などの免疫細胞も大きなダメージを受けてしまいます。

殺細胞剤による化学療法後にANK免疫細胞療法を追加するのは、総数の減少したがん細胞を狙って追い打ちをかけることになり、2つの治療の相乗効果を高める治療設計になります。また同時に、殺細胞剤で免疫力の低下した体内に、活性を高めたNK細胞(ANK細胞)を投与してやることになり、脆弱化した免疫を立て直すことになる点でも非常に理にかなっています。

ところが、同じ併用でも、殺細胞剤とANK細胞のタイミングをずらさずに「同時投与」すると、そのような効果はまったく期待できないことになります。がん細胞を選択的に攻撃できるANK細胞を投与しているにもかかわらず、殺細胞剤はその強力な攻撃部隊にまで大きなダメージを与えてしまいます。敵陣(がん)に向かって突撃している精鋭部隊(ANK細胞)に対して、味方(殺細胞剤)が後ろから容赦なく砲弾を浴びせるようなものです。

これは、前述した殺細胞剤とADCC抗体医薬品の同時併用と同じことです。殺細胞剤とANK免疫細胞療法は原理が違うので、両方の効果を存分に引き出そうとするなら、同時併用ではなく、時期をずらして使い分ける併用でなければなりません。がんを効率よく叩くために殺細胞剤の使用は排除せず、しかし、抗体医薬品やANK免疫細胞療法のような免疫系の治療とは、原理的に矛盾しないような使い分けを考えることが必要です。治療設計上むしろ重要なのは、患者様の病態に応じて、どちらの治療を先に行なうかなどを検討することでしょう。

化学療法の効果を高める「合間治療」

ANK免疫細胞療法と標準治療の組み合わせは、基本的に「標準治療でがんを大きく減らし、残ったがんをANK免疫細胞療法でなくす」という方向で組み立てます。最終的に、ANK免疫細胞療法によって免疫監視機構を再建することを目指すのです。私自身、手術不能のがんをANK免疫細胞療法で手術可能に持ち込むなど、「ANK免疫細胞療法で標準治療のお膳立てをする」場合があります。しかし、そのようなケースでも、やはり後ろにANK免疫細胞療法が控えていて、最後の大掃除をするというイメージを持っています。

ここで、ANK免疫細胞療法と化学療法を併用する方法のなかでも、ちょっとユニークなものに触れておきましょう。化学療法の投薬期間の合間(休薬期間)に、強度を弱めたANK細胞を点滴する方法です。ANK免疫細胞療法に携わる人々は、これを「合間治療」と呼んでいます。貴重なANK細胞を治療のプロセスで活用するので、やや例外的な手法です。具体的には、化学療法の副作用を和らげることが有意義だと思われる場合の選択肢です。

殺細胞剤の副作用に対する感受性は個人差があり、なかには耐えられずに治療をやめてしまう患者様もいます。しかし、体内に大量のがん細胞が残っていて、薬剤耐性がまだ出ていない段階で化学療法を切り上げるのは残念です。そこで合間治療は、少しでも化学療法の副作用を和らげ、化学療法を続けられるようにする目的で行なわれます。

例えば、3週間おきの殺細胞剤投与の「合間」に、通常の点滴の半量に相当するANK細胞を1~2回点滴します。この方法だと、ANK細胞の治療強度は低く、がんを強力に攻撃するような力はありません。高熱などの激しい副反応(免疫刺激の明らかな証拠)もあまり現れません。しかし、実行している医師の感触としては、患者様が化学療法を続けられる期間が延び、殺細胞剤の効きもよくなるようなのです。

この場合も、殺細胞剤に薬剤耐性が生じたら、すぐに殺細胞剤の投与はやめ、通常のANK免疫細胞療法に切り替えます。

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