コラム「ANK免疫細胞療法の治療の流れ」

コラム

書籍連載

【第3章】自己免疫でがんを消すANK免疫細胞療法
ANK免疫細胞療法の治療の流れ

ANK免疫細胞療法の基本的な流れ

実際のANK免疫細胞療法の流れを、まずおおまかに見ておきましょう。ANK免疫細胞療法は自由診療として行なわれており、ANK免疫細胞療法実施医療機関でしか提供されていないがん治療法です。保険診療を行なっている一般の医療機関に行っても、ANK免疫細胞療法のことを知っている専門家はまずいません。大学病院や総合病院は、高度先進医療などの例外を除けば基本的に標準治療を推進しており、たとえ地域の基幹病院であっても、ANK免疫細胞療法は行なっていません。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

近くの大病院に行ってANK免疫細胞療法のことを尋ねたり、「ANK免疫細胞療法を受けたい」と相談したりしても始まりません。本書を手に取っている方は、すでに糸口をつかんでいることになりますが、普通は、ANK免疫細胞療法実施医療機関を探すことから始まります。

  1. ①実施医療機関を探す

    ANK免疫細胞療法実施医療機関は、全国におよそ30あります。がん治療法に関する情報提供を行なっているリンパ球バンクのホームページ(http://www.lymphocyte-bank.co.jp/)に、所在地や連絡先が掲載されています。

  2. ②ANK免疫細胞療法医と面談する

    ANK免疫細胞療法を実施している医療機関で、医師と面談し、説明に納得してから治療を申し込んでください。治療に入る前に、医師は患者様の状態に最も合った治療設計(方針)を提案します。

  3. ③リンパ球を採取する

    NK細胞を含むリンパ球を採取します。当クリニックには、リンパ球採取機が2台あります。採取したリンパ球は、京都にある専用培養センターに人の手によって慎重に運ばれます。ご家族や信頼できる人が直接、運びこまれてもけっこうです。

  4. ④ANK細胞の培養完了を待つ

    ANK細胞の培養には、通常3週間前後かかります。貴重な時間を活かすため、その間に医師の治療設計に応じた化学療法や放射線治療などを受ける場合または血中HER2が9.0以上ならハーセプチンを週1回点滴して、がんの増殖を抑えてANKの投与を待つケースがあります。

  5. ⑤ANK細胞の点滴を開始

    ANK細胞が培養できたら、原則週2回のペースで点滴を繰り返します。この治療によって徐々に免疫力を高め、最終的にがんをなくしたら、再発しないレベルまで免疫力を回復させるのが治療のゴールになります。体力のない患者様(医師による判断)はANKの半量投与からスタートし、全量投与へ切り替える治療法もあります。

    ハーセプチンとの併用の場合、安全を考慮して別日に行なうので、週3回来院していただくことになります。患者様の同意により週2回(同日投与)することもあります。

ANK免疫細胞療法のながれの図

ANK免疫細胞療法実施医療機関の探し方

全国にあるANK免疫細胞療法実施医療機関は、どこも同じ京都の専用培養センターに患者様のNK細胞の増殖・活性化を委託しています。ANK免疫細胞療法は最初の治療設計からその後随時変更することが多く、併用薬の選択も含め、経験豊富な医師を探して、正しい治療計画やその後の対応を依頼する必要があります。

治療を受けたい患者様は、ご自身の住んでいる地域に近い、通いやすい病院やクリニックを選ぶとよいでしょう。NK細胞の増殖・活性後、原則週2回の点滴(副反応を考えると実質半日がかりの治療)に何週間も通い続けることになるからです。

私のクリニックでは、私が主治医となり、3・4回は通っていただき、その後は地元の医療機関で点滴を受けていただくようにしています。地元の医療機関は患者様に探してもらいます。

ANK免疫細胞療法の普及を図り、実施医療機関をサポートしているリンパ球バンクという会社があります。細胞培養センターの設立・提供など、医療機関を支援するのが主な業務ですが、がん治療に関する情報提供も行なっていて、一般向けのセミナーも開催しています。そこで初めてANK免疫細胞療法のことを知る方も多いようです。

ただし、リンパ球バンクは医療行為をする組織ではありませんので、がん患者様を治療したり、病院をあっせんしたりすることはできません。がん患者様やご家族の方は、そうして得られた情報を自己判断して、ANK免疫細胞療法実施医療機関に行き、医師と面談することが必要です。

ANK免疫細胞療法を行なっている医療機関は、全国におよそ30カ所あります。まだそれしかないといったほうがよいでしょう。いずれの医療機関も、ANK免疫細胞療法に関してはリンパ球バンクのサポートを受けており、リンパ球バンクのホームページを見ていただくと、所在地や連絡先がわかります。

治療は医師との面談から始まる

ANK免疫細胞療法を受けることを検討したい患者様は、必ずANK免疫細胞療法実施医療機関で、医師と面談していただく必要があります。1~2時間かけてじっくり相談しますので、基本的に事前の予約が必要です。

医師との面談には、2つの意味があります。とくに初回の面談は、「この治療法を受けるかどうか」をよく考えていただく機会にもなります。医師と面談し、説明を聞いたうえで、納得できたら申し込みをしてください。もちろん多額の自己負担で行なう自由診療ですから、その場で治療を受けることを決めなくてもかまいませんし、治療を受けないことにしてもかまいません。

そして、治療を望む患者様は、病態に応じた自分自身の治療設計を医師と個別に相談することになります。医師に自分の体調やがんの状態をよく説明し、わからない点をしっかり質問して確認してください。すでにほかの病院で治療を受けている方も多いと思いますが、検査画像や腫瘍マーカー値、カルテなどの資料が提供してもらえる場合は、あらかじめ準備していかれることをお勧めします。

そのほうがANK免疫細胞療法担当医師が正確な診断と治療設計を迅速に行なうことが可能となります。がん患者様にとって、時間は貴重です。

医師とよく話し合って、治療方針を決めたら、あとはがんと闘うばかりです。ここで強調しておきたいのは、私を含め、ANK免疫細胞療法を実施している医師は、ANK免疫細胞療法を絶対的な武器だと信じています。ですが、標準治療の手段も含めて、使える武器は総動員してがんとの闘いをなるべく有利に進めることを考えています。ANK免疫細胞療法は、がんと闘う数ある武器の有力な1つなのです。

したがって、治療設計は患者様によって異なります。あとで述べるようにさまざまな方法がありますが、患者様自身の体調やがんの状態を考慮して、柔軟に、最善の治療法の組み合わせを考えていくのです。

リンパ球分離採取と全血採取

治療を受けることを決めた患者様には、NK細胞を含むリンパ球を採取していただきます(血液採取の場合もあります)。NK細胞の増殖・活性化に3週間程度かかりますので、迅速にANK免疫細胞療法を進めるためには、リンパ球の採取はなるべく早く行なったほうが有利です。

また、リンパ球などの免疫細胞は抗がん剤(殺細胞剤)に弱く、化学療法を受けるとダメージを受けてしまいます。化学療法前に採取したNK細胞は、それだけ増殖・活性化に手間がかからず、もともと活性が高いのでさらに活性を高めるうえで有利になるわけです。

そこで、まだ化学療法を始めていない場合は、その治療を始める前にリンパ球を採取するのが望ましい方法です。

すでに述べたように、NK細胞の増殖・活性化は非常に難しく、時間もかかります。ですから、少しでも多くのリンパ球を集め、その分多くのNK細胞から培養を始めるために、全国に10カ所程度、リンパ球分離採取機が導入されています。数が限られていますので、これも予約が必要です。

リンパ球分離採取機によるリンパ球採取(リューコフェレーシス)は、ベッドに横になった状態で、5000ml~8000ml相当の血液を体外循環させ、約2時間かけて行ないます。前後の処置を合わせるとだいたい3時間ほどになります。じっとしているのは大変で、途中で気分の悪くなる方もいらっしゃいますが、貧血があっても、医師の判断によってリンパ球採取は可能です。抗がん剤の副作用(骨髄抑制)で貧血になる方がいらっしゃいますが、その場合にはリューコフェレーシスが向いています。

もう1つのNK細胞の採取方法は、注射器による全血採取です。採血による場合は、リンパ球採取を行なう場合に比べて培養を始める時点でのNK細胞が少なくなり、そのぶん、採血の回数を増やす必要があります。目安として、100ml採血するとANK細胞の点滴3回分が培養できます。200mlの採血でANK6回分、400mlの採血でANK12回分(1クール)に相当します。

しかし、リンパ球採取と全血採血では、得られるリンパ球に数十倍もの違いがあります。リンパ球採取のほうが、活きのいいリンパ球が採取できるので治療上圧倒的に有利です。

リンパ球採取機が少ないこともあって、設置医療機関への移動が大変な方には採血もお勧めしているようです。一度にたくさん血を採るのが無理だと思われる場合は、何回かに分けて採血することもあります。ANK免疫細胞療法医と相談していただけばよいでしょう。

NK細胞を選択的に増殖・活性化

採取したリンパ球(または血液)は、全国から京都の専用培養センターに運ばれます。

そして、通常3週間前後かけて、そのなかに含まれているNK細胞を選択的に増殖・活性化させます。がん特有の異常に強い免疫抑制で活性が低くなっていたNK細胞は、この培養によって活性が高まり、がん細胞を攻撃する力を取り戻します。

こうして増殖・活性かされるANK細胞は、1980年代の大規模臨床試験の際にアメリカのNIH(国立衛生研究所)が作ったLAK細胞をはるかに凌駕するものです。ANK免疫細胞療法の共同開発者の一人である勅使河原医学博士は、1980年代にアメリカのダートマス大学で研究中、LAK療法の研究者からNK細胞を選択的に増殖できれば、がん治療は変わるという話を聞いた際、彼らの培養法に無理があることに気づいていました。そこで、帰国後に、複雑な技術を組み合わせる繊細な培養法を駆使し、世界で初めてNK細胞の活性を高めながら、同時に増殖させることに成功したのです。NK細胞は、培養を続けると活性が低下するのでアメリカでは3日以上培養はしませんでした。NK細胞の増殖・活性化を同時に行なうのは至難の業なのです。

培養が完了し、増殖・活性化したNK細胞(ANK細胞)は、必要となるタイミングまで専用培養センターに超低音凍結保管され、点滴する日に合わせて解凍され患者様が点滴を受ける医療機関に届けられます。

ANK免疫細胞療法1クールを12回の点滴に分けている理由は、治療強度をコントロールして安全性を担保するためです。活性を高めたNK細胞を一度に大量に投与すると、LAK療法のように激しい免疫応答を呼び起こす問題と、腫瘍が一度に大量に壊死を起こせば、ICUの中でなければ患者様の命が脅かされる可能性があります。そこで、ANK免疫細胞療法では1回の点滴で投与する量を調整し(原則、細胞数5~10億個)、免疫を強く刺激しながら、副反応の発熱が40度前後にとどまるような設計にしているのです。それ以上では危険、それ以下では効果が落ちるというデリケートなレンジで免疫への刺激をコントロールしているところが、ANK免疫細胞療法の大きな特徴なのです。

1クールの点滴は週2回×6週間

ANK免疫細胞療法の点滴は、原則週2回のペースで行ないます。点滴には1時間程度かかり、そのあと半日から1日ほど、発熱などの副反応が出るのが普通です。

ANK細胞は体内に入ると、次のような作用を発揮します。

  1. ①ANK細胞自身が、直接がん細胞を攻撃する1次効果。
  2. ②免疫抑制によって眠っている体内のNK細胞を目覚めさせる2次効果。
  3. ③特定のがんだけを攻撃するCTLの活性も高め、攻撃に動員する3次効果。

この2次効果、3次効果は、ANK細胞が免疫刺激物質(サイトカイン)を放出して、免疫を刺激するはたらきによるものです(その際に、サイトカインは発熱物質でもあるので発熱などの副反応を伴います)。ところが、強い免疫抑制のかかっている体内では、せっかく暴れていたANK細胞にも投与後数日で免疫抑制がかかり、眠らされてしまいます。

そこで3~4日後に、追加のANK細胞を援軍として送り込み、徐々に免疫レベルを高めていくわけです。それが「原則週2回」の点滴を続ける理由です。そうやってがんと闘えるNK活性を保ちながら、最終的にがんに打ち克つことを目指すわけです。

ANK免疫細胞療法の経過のイメージ図

副反応は作用(免疫刺激)の裏返し

ANK免疫細胞療法の典型的な副反応は、点滴のあとに現れる発熱です。一般にかなり高い熱が出ますが、原則として入院などをする必要はなく、翌日には普通に仕事をされる方も少なくありません。ただ、副反応は個人差が大きく、同じ患者様でも毎回同じ現れ方をするとはかぎりません。

したがって、これはあくまで「典型例」ということになりますが、副反応がどんなものかに触れておきましょう。

ANK細胞の点滴のあと1~2時間たつと、まず悪寒や震えなどが起こって、さらに1~2時間たつと熱が上がり始めます。発熱はピーク時に40度前後になることが多く、それ以外にもふしぶしの痛みなどを訴える方がいらっしゃいます。悪寒、発熱のほかによく現れる副反応は、関節痛、筋肉痛、吐き気、頭痛などです。さまざまな症状ですが、私たちANK免疫細胞療法医は、「ひどいかぜの症状からせきやのどの痛みを除いた、あらゆる症状が起こりうる」とご説明しています。

それを週に2回ずつ繰り返すのは、多くの患者様にとって苦痛であろうと察します。ただし、これは、殺細胞剤や放射線の副作用とは違って、細胞の遺伝子にダメージを与えるようなものではないので、あとあとに影響が残るようなことはありません。

高い熱などの副反応は徐々に治まります。点滴をした当日の夜から、翌朝にかけて治まる場合が多いようですが、これにも個人差があります。とくに、初めて点滴をした日や、2~3度目のうちは、何日か熱が上がったり下がったりする場合もあります。

これらは、たしかにつらい症状ですが、免疫抑制を破るために起こっている大切な反応でもあります。発熱は、免疫が目覚めるときに必ず伴う反応ですから、逆に免疫細胞療法の強度を測るうえでの、有力な尺度にもなります。現在、さまざまな免疫細胞療法が存在しますが、治療(点滴など)をしても発熱するようなことがない場合は、十分な治療強度が得られていない可能性があります。

腫瘍消失、マーカー値正常なら経過観察へ

1クール12回(6週間)の治療を、どのぐらい続ければよいかは、患者様ごとの病態によってまったく異なります。

本書の冒頭で、がんになりそうもない元気な人はNK活性が高い、逆にがんの患者様はおしなべてNK活性が低いという話をしました。

ANK免疫細胞療法の理論と治療設計からいえば、点滴で免疫レベル(NK活性)を上げ、また数日で抑制がかかって免疫レベルが下がってきたところで、また点滴してレベルを上げるというサイクルを何度も繰り返すうちに、一定以上の免疫レベルが保たれるようになります。そうしてがん特有の強い免疫抑制が最終的にリセットされ、腫瘍免疫(免疫監視機構)がはたらくようになれば、ANK免疫細胞療法の目的は達せられます。

ただし、NK活性の正確な測定は研究レベルの話で、それを診断指標とするのは非常に困難です。すべての患者様を対象にして大量の検査を行なうことなどはできない相談です。そこで、実際には標準治療と同じように、画像診断や腫瘍マーカー、臨床所見などを総合的に評価して、治療の効果を判断しています。

NK活性の測定をしなくても、画像上で腫瘍が消失し、異常を示していた腫瘍マーカー値が正常になれば、「寛解」として、経過観察へ移行します。また、血中HER2をマーカーとして、判断基準にすることもあります。定期的に測定し、HER2が上昇したら画像上正常でも、がんが暴れている可能性があると判断した場合は、ハーセプチンを投与することがあります。

1クールの半ばで2クール目を検討

ANK免疫細胞療法は、手術後の再発予防として実行するのが最も理想的ですが、その場合、1クールまでは必要ないと思われる場合も多々あります。ただし、予断が外れる可能性もあるので、基本的には1クールで実施します。

早期がんが根治できたようにうかがわれ、差し当たって高額なANK免疫細胞療法を行なう必要まではないと考えられるなら、あえてANK免疫細胞療法をお勧めしない場合もあります(がんなら誰にでもANK免疫細胞療法を勧めるというわけではありません)。

そのような場合は、経過を観察して異常が出たときに迅速に対処すればよいということになります。

逆に、進行がんの末期で、もう打つ手がないといわれるギリギリまで標準治療を続けてきたような場合は、ANK免疫細胞療法をもってしても、免疫の再建および治療は非常に厄介になります。たび重ねてきた化学療法や放射線療法によってNK細胞をはじめとする免疫系も疲弊していて、1クールのANK免疫細胞療法では、免疫系を回復させるだけで精いっぱいということも珍しくありません。

そこまで行かなくても、経過観察まで持ち込むには2クール目、3クール目の点滴が必要だと思われるケースはざらです。医師である私も「もっと早く来てほしかった」と思いますが、ご本人やご家族なら、なおさらそう感じておられるでしょう。

そのような場合は、1クール目の途中で2クール目のNK細胞の増殖・活性化を検討することになります。NK細胞を増殖・活性化するには3週間前後が必要なので、その前に2回目のリンパ球採取を行なってしまうのが望ましいことになります。半クール(週2回×3週間=6回)の点滴を終え、残る点滴が3週間分(6回分)になったところが、2クール目のリンパ球を採取し、培養を始めるタイミングです。順調に増殖・活性化が進めば、1クール目と2クール目の点滴を、治療設計どおりに連続して進めることができます。

ちなみに、1990年代に一般診療を始める前に行なった臨床試験では、1クールで治療を終えるという発想はなかったと思います。何クールでも点滴を繰り返し、治るまで続けるのが本来のANK免疫細胞療法なのです。

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