ウェルネスコラム「世界初!日本の技術がANK免疫細胞療法を確立」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第2章】NK細胞を活性化しないとがんは消えない
世界初!日本の技術がANK免疫細胞療法を確立

1990年代に実現したNK細胞の増殖と活性化の両立

免疫細胞療法の大勢がCTLの活用に流れるなか、あくまでもNK細胞の培養にこだわる人々もいました。そのなかに、日本の京都大学の研究者グループもありました。
そして1990年代に、NK細胞の活性を高めながら、選択的に増殖させる培養技術を、ついに確立したのです。現時点でNK細胞の増殖と活性化に成功しているのは、世界でも、京都大学発ベンチャーであるリンパ球バンクの関連グループだけです。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

この繊細な培養技術が、LAK療法の流れを汲む「免疫細胞療法の王道」、NK細胞を用いた本格的な免疫細胞療法に、実用化への道を開いたのでした。NK細胞が自在に培養できれば、LAK療法のように一度に投与して命を脅かす必要はなく、効果と安全性に折り合いをつけながら、免疫刺激をコントロールする治療設計が可能となります。

先ほど述べたように非常に扱いづらいNK細胞を相手に、増殖と活性化を両立するのは、極めてデリケートな操作です。アメリカでは、マニュアル化に成功しなかったため、LAK療法で有効性を確認しながらも、NK細胞療法の実用化には至りませんでした。京都では、24時間モニタリングしながら、NK細胞の条件に合わせて培養液を変更して成功したのです。

アメリカはなんでもマニュアル化するのが好きな国です。マニュアル化できないことは諦めてしまう傾向にあります。しかし、NK細胞の培養技術は、マニュアル化するのが非常に難しいそうです。要するに職人技であって、「こだわり」がなければ期待に応えることのできない世界なのでしょう。だからこそ、「匠」を尊ぶ日本で、ANK免疫細胞療法が確立できたのだと私は思っています。

がん患者様のNK細胞は、例外なく活性が下がっており、(今のところ)多くは治療によってもダメージを受けています。培養センターでの年中無休の作業は、消えかかった生命をつなぐ営みなのだと思っています。

ANK免疫細胞療法の基本的な治療設計

ANK免疫細胞療法がどういうものかを、簡単に説明しましょう。

まず、この治療を受ける患者様は、ANK免疫細胞療法実施医療機関でリンパ球の採取をしていただきます。これは通常、リンパ球分離採取機という機械で行ないます。ご本人の血液を機械に体外循環させて、遠心分離によってリンパ球などを分離採取する機械です。

そうして集めたリンパ球などは、即刻に京都にある専用培養センターに運ばれます。そして、患者様一人ひとりのリンパ球などに含まれているNK細胞を、一般的には3週間前後かけて、活性を高めながら選択的に増殖させるのです。こうして十分に増殖・活性化したNK細胞は、ANK細胞=増強されたNK細胞(Amplified Natural Killer Cells)と名づけられています。

ANK細胞は、培養センターで超低音凍結保存され、患者様が点滴を受けるつど、医療機関に届けられます(ANK免疫細胞療法は、原則週2回、合計12回の点滴を1クールとして提供されます)。ANK細胞は1980年代に試されたLAK細胞よりも強力で、1回の培養でNK細胞数は100億個前後を目標に培養します。もしこれを一気に点滴すると、大きな腫瘍が一気に壊死する際のショックでやはり命に関わります。1回に点滴する数は5億~10億個にとどめて、免疫系に十分な刺激を与えつつ、40度前後の発熱程度にコントロールされています。

ANK細胞、すなわち活性を高めたNK細胞が点滴で体内に戻ると、2つのがん攻撃作用を発揮します。1つ目は、直接がん細胞を識別して攻撃する作用です。そして2つ目は、大量のサイトカインを出して体内にいる仲間のNK細胞の活性を高め、いっしょにがんを攻撃するように動員する作用です。

その際の強力な免疫刺激作用によって、点滴後は、半日から1日ぐらい、さまざまな副反応(40度前後の発熱など)が現われます。副反応には非常に幅広い個人差がありますが、原則として入院する必要などはありません。

念のためにいっておくと、熱が出るのは決して悪いことではありません。ANK細胞を投与すると、多くの方は発熱しますが、活性化したNK細胞を大量に投与すると、そうした副反応が生じるのが道理なのです。なぜかというと、ANK細胞がサイトカインを放出し、がんによって眠らされているNK細胞を呼び起こしているからです。サイトカインが免疫を覚醒しようとしているときには、熱や炎症が伴うものなのです。

しかし、がん患者様の体内は、強い免疫抑制状態にあるので、投与したANK細胞のパワーも、ずっと持続するわけではありません。たいてい数日以内に、また活性が低下してしまいます。そこで、原則週2回ずつ点滴を繰り返すことで、免疫のレベルを徐々に引き上げていく設計になっているのです。

そうやってがんになる前以上の免疫力を回復し、最終的にがんに打ち克つことを目指すのがANK免疫細胞療法の基本設計です。

ANK免疫細胞療法の流れ

臨床試験を経て2001年に一般診療を開始

こうしてANK免疫細胞療法の基礎設計はできました。しかし、ここまでは大学での研究段階です。免疫細胞療法の有効性を確かめ、実用化するためには、化学療法を併用しない臨床試験を行なう必要がありました。

ANK免疫細胞療法は、活性化したNK細胞によって免疫の力を高めて、がんを叩く治療法です。一方、標準治療の治療設計は、もともと免疫に配慮したものではありません。ANK免疫細胞療法と同じ全身療法は化学療法(殺細胞剤による抗がん剤治療)ですが、殺細胞剤は免疫にダメージを与えてしまいます。それどころか、せっかく培養・活性化したANK細胞自体を殺してしまうので、絶対に同時併用はできませんでした。そこで、ボランティアによる小規模な臨床試験が行なわれました。

初めから4クール連続で投与した結果、臨床試験に協力してくれた患者様のがんは、ANK免疫細胞療法を受けただけで徐々に退縮し、最終的には消えていったのです。ただし、がんは治療がうまくいって治ったように見えても、再発する可能性は否定できません。そのため、一般的に5年の経過観察、つまりフォローアップを行なって、再発が見られなかった場合に完治とみなされます。

そこで、がんが消えたあとも5年間の経過観察が続けられました。そして、その期間を経ても、臨床試験に協力してくれた患者様にがんの再発は見られなかったのです。

がんをやっつける力と、安全性を両立した、実用的な免疫細胞療法が、ようやく完成したのでした。そうして2001年、ANK免疫細胞療法を開発した研究者たちは、京都でNK細胞の増殖・活性化を行なう免疫細胞療法の専門クリニックを開院しました。

進行がんを治せる治療法と直感し、すぐに導入

私は、消化器専門医として、胃がんや大腸がんの早期発見・早期治療に努めてきました。自分でいうとおこがましいのを承知でいえば、人の何倍も本気で早期発見・早期治療に取り組んできたつもりです。だからこそ、発見したときにすでに進行がんになっていて、けっきょく治せない、患者様を救えなかったというケースには悔しい思いをしてきました。医師として無力さを突きつけられるわけです。

この状況をどうにかできないかと、私はずっと考えていました。しかし、標準治療には進行がんの患者様を救える手段が欠けているのです。そんな問題意識を抱え続けていた2005年、ANK免疫細胞療法に出会い、そのすばらしさを直感して、クリニックに導入したのです。

それ以来、京都の培養センターと連携を取りながら、患者の診断、リンパ球採取と、ANK細胞の点滴を行ない、2013年9月にはおよそ400例を数えるまでになりました。これまで全国で実施されている総数が2000例弱だそうです。したがって、だいたい5分の1の症例を扱ってきたことになります。

ANK免疫細胞療法は、自由診療です。多くの方々は保険診療しか行なっていないという現実から、まだ知名度の低いがん治療法といえるのです。

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