ウェルネスコラム「がん特有の異常な「免疫抑制」」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第1章】かぜもがんも原因は「免疫力」
がん特有の異常な「免疫抑制」

NK細胞を眠らせようとするがん

きっかけはさまざまですが、がんができるときには、何らかの原因で、「がん対NK細胞」の勢力バランスの逆転が起こっています。その様子は、現在のどんな検査機器でも見ることはできません。しかし、どういう形にせよ、免疫監視の網の目をかいくぐったがん細胞が、天敵であるNK細胞をしりめに増殖を始めるというのが、がんの発端であることはまちがいありません。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

厄介なことに、がんは、こうして増殖を始めるのと同時に、免疫監視機構(すなわちNK細胞による腫瘍免疫)を眠らせようとします。

そのやり口たるや、敵を攪乱して惑わせようとするゲリラそのものです。どういうことかというと、免疫系にニセの信号を発して、腫瘍免疫の発動を抑えるようにはたらきかけるのです。すると、NK細胞たちの活性は著しく低下し、がん細胞を見分けたり、攻撃したりする通常のはたらきができなくなります。がん細胞を見つけしだい潰していたNK細胞が、近くにがんがあっても反応しなくなるのです。

これががんの本質に深くかかわっている「免疫抑制」というメカニズムです。免疫抑制は、もともと体に備わっているしくみです。というのは、免疫システムが強く発動するときには、炎症や発熱といった反応を生じます。これを「免疫応答」といって、わかりやすい例でいえば、インフルエンザで発熱したときのような状態です。

そういう反応が、ちょっとした異物に反応してひっきりなしに起こっていては、逆に生活に支障をきたしてしまいます。そこで、免疫細胞どうし、常に連絡を取り合って大きな危険がないときには過敏に反応しないようにしているのです。

つまり、免疫細胞たちが自粛して、適度に免疫応答を抑制しているのが、本来の免疫抑制です。これは、体の防衛反応が暴走しないようにするしくみで、適度な免疫抑制は、普通に生活していくうえで必要なものなのです。

しかし、ずるがしこいがんは、そういうメカニズムがあることにつけこんで、異常に強いレベルで免疫抑制をかけさせようとはたらきかけてきます。免疫細胞どうしが連絡に使っている信号物質を出して、T細胞や樹状細胞をはじめとする白血球をだまし、強い免疫抑制をかけさせるのです。そうして体内を、自分の増殖に有利な環境にしておいて、我が物顔で増殖を続ける。それが、がんという敵の空恐ろしいぐらいにずるいところです。

この「異常な免疫抑制」という特徴を知ると、がんは免疫の病気であるという意味が、よく理解できるのではないでしょうか。

我々は、本当にがんを治そうと思ったら、強い免疫抑制下にある自分の免疫システムを解放して、本来の正常な状態を取り戻さなければならないのです。

がんはかぜのようにありふれた病気?

NK細胞がいるのに、なぜ人はがんになるのか、もうおわかりになったでしょうか。

よく考えてみれば、「どうしてがんになってしまうのか?」という問いは、科学的に考えれば愚問なのかもしれません。早期発見の意義を考えていて、そう思うことがあります。なぜなら、我々は、たまたまかぜをひいたときに、「なぜ、人はかぜをひくのか?」と嘆いたりはしません。「たまにはかぜぐらいひく」というのが普通の感覚でしょう。しかし、それががんだったらどうですか。「なぜ私が......」と呆然としたり、「健康には気をつけていたのにひどい......」と嘆いたりするのではないでしょうか。

がんは、半数の人がかかる、決して珍しくない病気です。それなのに、かぜに対する態度と、どうしてこれほど違う反応になるのでしょうか。それは、かぜならまあいいけれど、命にかかわるがんの発症は、自分には絶対起こってほしくないからです。起こってほしくないから起こらないと信じている。その期待を裏切られると取り乱してしまうということだと思います。

しかし、かぜやがんの側からすれば、発症が宿主にとって深刻かどうかは、別に関係ありません。自然現象ですから、それこそ淡々と、発症するときには発症します。

だから我々も、自分の期待や価値観を交えないで、ありのままの現象としっかり向き合わなければなりません。たまにはかぜをひくのが当たり前なら、たまたまがんになることもあるのです。

ただ、がんの場合は、急性疾患のかぜと違って、病気になってもすぐには気づきません。初めのがん細胞が育ち始めてから、10年以上の時間をかけて、腫瘍が1cm、細胞数が10億個ぐらいになって初めて診断できるレベルになってきます。見えないがんは、たいていの人が持っている。そう考えるほうが、むしろ賢明でしょう。がんに命を奪われたくなかったら、画像診断で写る大きさになったときに、いち早く対処できるよう「早期診断・早期発見」に努めるほうが圧倒的に有利なのです。

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