ウェルネスコラム「がん患者のNK活性は低い」

ウェルネスコラム

書籍連載

【第1章】かぜもがんも原因は「免疫力」
がん患者のNK活性は低い

免疫力の低下ががんを発生させる

そもそも、免疫力が低下するとがんになりやすいことは、よく知られている事実です。
例えばですが、免疫抑制剤という免疫のはたらきを抑える薬があります。免疫抑制剤は、リウマチなどの膠原病治療や、臓器移植後の拒絶反応を抑える目的などで投与されます。長期連用した場合のその副作用として、発がんを招きやすいことが知られています。ステロイド剤の長期投与でも同様です。ステロイド剤は一般に有効な抗炎症剤として知られていますが、やはり免疫を抑制する作用があり、結果として発がんのリスクが高まるのです。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

分子標的薬の副作用を抑える目的で、ステロイド剤を使用しますが、その副作用で培養中のNK細胞の活性が低下することが分かりました。患者様の同意を得てステロイド剤を使用しないことにしています。

私は実際に、リウマチで免疫抑制剤を長期連用していた50代の女性で、子宮がんになった患者様を診ています。免疫抑制剤は、できれば長期連用を避けたい薬です。余談になりますが、私はリウマチの患者様に、自分が開発したコラーゲンサプリメントを摂取してもらい、免疫抑制剤を服用しなくてよくなったことがあります。興味のある方は、拙著『血管が若がえれば健康寿命はのびる』(幻冬舎メディアコンサルティング)を参照してください。

NK活性―がんの人はこれが低い

現在、日本人の半数が生涯のうちに一度はがんになり、3分の1はがんが理由で亡くなる時代だといわれています。高齢男性の前立腺がんのように、亡くなってから初めてわかるケースも少なくありません。

NK細胞による免疫監視機構があり、がん細胞を排除しているのに、どうしてがんは生じるのでしょうか。そのカギが、まさにNK活性です。

健康な人は、もちろんNK活性が高く、NK細胞の勢いががんを圧倒しています。NK活性は、特殊な機械と計算法で測定することができます。実際に測ってみると、「まずがんにはならないな」と感じるような元気な人は、やはりNK活性が高い傾向があります。

一方、がん患者様を対象に測定すると、案の定、NK活性は低いのです。

ANK免疫細胞療法の開発に関連して、がん患者様と健康な人のNK活性を比較したことがあるそうす。その結果、患者様はすべてNK活性が低いことが判明しました。それに対して健康な人は、NK活性が高い人から低い人までさまざまです。

臨床検査センターでもNK活性を測定しますが、NK活性は日内変動が激しく、1回の測定値では絶対値を反映しているとはいえませんので、あくまでも参考値としてとらえてください。

健康な人のNK活性が高いのは理解できるとして、なぜ低い人がいるのでしょうか。これは推測ですが、健康でもNK活性が低い人は、もしかしたらがんが発生している段階かもしれません。つまり、がん細胞が増え始めているとか、検査機器では見えない大きさのがんが体のどこかにあるといったケースです。健康と思われる人からがん患者様が出てくるのですから、そうした可能性は否定できません。

将来的に、NK活性のもっと使い勝手のよい測定法ができれば、がんの「早期発見」の指標にもできるのではないかと、私は考えています。

上がったり下がったりするNK活性

NK活性は、免疫監視機構がしっかりはたらけるかどうかの生命線といえます。この活性を、もっと具体的にイメージするなら、「がん対NK細胞」という勢力バランスにおける、NK細胞チームの「力強さ」「勢い」などと思えばよいでしょう。

日常的にがん細胞が生まれているのは、誰の体内でも同じです。もしがんになるか、ならないかの分かれ目があるとしたら、がんの芽を摘んでいるNK細胞チームの戦力が、がんの勢力よりも強いか弱いかです。がんの側から見れば、精強なNKチームの目を盗んで生き延び、彼らの勢いに負けずにしのいでいけるか、ということになります。ここに、がんの発症に大きく関わってくるメカニズムがあります。

がんの人はおしなべてNK活性が低いのですが、実は、NK活性は、1日のうちでも上がったり下がったりしているのです。

「笑うと免疫力が高まる」といわれています。実際に、笑った瞬間のNK活性を測定するのは不可能ですが、様々な要因でごく短期間、NK活性が上下することは事実のようです。

「がん対NK細胞」という勢力バランスは、常に微妙に動いているわけです。がんになりにくい人とは、厳密にいえば、NK活性に波があっても、常に人並み以上に高い人のことです。平均的な人だと、NK活性が非常に低くなったときに、「がん対NK細胞」のバランスで、がんが優位になる可能性があります。また、大病をした後の人や、慢性病を抱えている人も、NK活性が下がり、がんにつけ込まれてしまう可能性が高まります。

NK細胞が勢いをなくす原因にはストレスも含まれる

ストレスががんを招くといわれることがありますが、それもある程度は正しいと考えてよいと思います。ストレスの種類にもよりますが、笑うのと反対に、苦しんだり悲しんだりすると、NK活性が著しく低くなるからです。

もともとNK活性が高い人でも、強いストレスを持続的に受けると発がんすることがあります。例えば、政治家の鈴木宗男さんは非常に生命力の強い方だと思いますが、収監されている間に胃がんとなり、手術を受けました。

ストレスとは、医学的には「体にとって有害な刺激」をいいます。そのなかには精神的な苦しみも含まれますが、具体的には、急迫した危険、不快な環境(寒さなど)、紫外線や化学物質にさらされることなどがあげられます。強いストレスの継続は、確かにNK活性を下げる要因になるでしょう。

ただし、最近の風潮として、緊張感を持って仕事に打ち込むべき人が、そのプレッシャーをストレスと言ったりする場合があります。そんな「自称ストレス」は、絶対にがんの原因にはなりません。仕事のプレッシャーで病気になるぐらいなら、一定の社会的責任を持つ人は、体がいくつあっても足りなくなってしまいます。

ストレス以外にも、がんの「原因」とされるものはいろいろあります。例えばそれは遺伝因子であり、俗にいわれる「がん家系」とか、乳房切除に踏み切ったアンジェリーナ・ジョリーさんに見られたというがん関連遺伝子(がん抑制遺伝子の変異)などがあります。

ほかにもがん関連ウイルスがあります。がん全般にウイルスが関係するわけではありませんが、子宮頸がんに関係するといわれているパピローマウイルスや、肝臓がんの誘因になるとされるB型・C型肝炎ウイルスなどがあり、そうした感染症が引き金となって、最終的に発がんするケースがあるといわれています。

しかし、そうしたウイルスのキャリア(感染者)が、みんながんになるわけではありません。発がんの決定的な要因は、ストレスや、発がん遺伝子や、原因ウイルスそのものではなく、あくまでも体内にいるNK細胞、免疫監視機構がうまく働いているかどうかが問題なのです。冒頭でも、重要なのは免疫力だと述べたとおりです。

免疫力が高ければ、「子宮頸がん予防ワクチン」と称するヒトパピローマウイルス感染症予防ワクチンを打ったり、健康な乳房を取ったりする危険を冒す意味はないのです。

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