コラム「がん免疫監視機構」

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【第1章】かぜもがんも原因は「免疫力」
がん免疫監視機構

ノーベル賞受賞者による現在の定説

ここで、発がんを抑えるしくみとして今日の定説になっている「免疫監視機構」説を紹介しておきましょう。
免疫監視機構説は、1950年代にオーストラリアのフランク・バーネット博士らが唱えた仮説で、1960年代には、すでに世界中の学者に認められていました。当時はまだNK細胞が特定されていませんから、「体内では常にがん細胞が生まれているが、免疫によって排除されている」という仮説でした。ちなみにバーネット博士は、クローン選択肢(あらゆる抗原を認識するバリエーションをランダムにつくり、次に、自己抗原を認識するものを排除することで、あらゆる異物を認識し、自分自身は攻撃しないシステムをつくる)に関する研究で、1960年にノーベル生理・医学学賞を受賞した世界的な学者です。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

この免疫監視機構説を支持する事実が次々と確認され、概ね正しいと考えられています。

がん細胞は、決して珍しいものではなく、健康な人の体内でも日常的に発生しています。その数をはっきり数えることはできないのですが、計算上、毎日数千個発生していると推測されています。それでもがんにならないのは、免疫監視機構というシステムがあって、正常に作動しているからなのです。

その主役がNK細胞です。体内には、およそ数百億のNK細胞がいて、常時全身をパトロールしています。そして、がん細胞と出会うとたちまち攻撃して殺してしまいます。活性の高いNK細胞が、見つけしだい排除しているので、健康な人の体内では、がん細胞はできる先から消えていく泡のようなものといえます。

がんの芽を摘む免疫監視機構の主役はNK細胞

もともと自己細胞であったがん細胞には、異物であることを示すような目印はありません。しかし、NK細胞は、活性が高ければ数十種類ものセンサーを伸ばして、がん細胞と正常細胞の「顔つき」を見分けます。細胞の表面に出ているのがほとんど同じ物質でも、その量や分布の差を探っているのだと思われます。

がん細胞の特徴の1つは、まさに頻繁に性質を変えるところにあるのですが、活性が高いNK細胞は、がん細胞がどのように姿を変えても見分け、つぶしてしまいます。しかも、その識別と攻撃は瞬時に行なわれ、がん細胞であれば、即座に「爆弾」のようなもの(パーフォリンとグランザイムというたんぱく質の顆粒)を注入します。そうされると、がん細胞は風船がしぼむように縮んでいき、死んでしまうのです。

このような細胞の最期は、ウイルス感染細胞が免疫系に排除されるときにも共通しています。異常細胞のアポトーシス(自死)といわれる現象です。

NK細胞ががんに立ち向かうときは、もう1つの武器も使います。それは、がん細胞を攻撃しながら、免疫系に信号を送ることです。すると、ほかのNK細胞が加勢してくるとともに、キラーT細胞の一部であるCTLも増殖し、がん退治に参戦していきます。
これが、体内で腫瘍免疫が働くときのメカニズムです。

NK細胞が健在で活性が高ければ、がんにはならないシステムを、私たちは体内に備えているのです。がんになるのは、この免疫監視機構が正常に作動していないからであり、それはNK活性が低いからだということになります。

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