コラム「免疫力の低下が、がんを発生させる」

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【第1章】かぜもがんも原因は「免疫力」
免疫力の低下が、がんを発生させる

免疫とは何か

免疫とは、体を病気から守っているシステムです。ただし、いくつかの異なるしくみからできており、一般に考えられているほど単純なものではありません。免疫というと、学校で習ったことや予防接種のイメージから、抗原・抗体を思い浮かべる人が多いようですが、それはがんに対する免疫とは別のものです。

がんと診断されたらANK免疫細胞療法

がんと診断されたら
ANK免疫細胞療法

抗原・抗体反応とは、体に入ってきたバクテリアなどの「抗原」を免疫系が学習し、次に同じ敵が侵入してきたときには準備していた「抗体」で迎え撃つ。そういうイメージです。確かに、それも免疫のしくみですが、免疫系は、それだけでは説明できません。

免疫には、予防接種でできる抗体のような獲得免疫以外に、学習なしで迅速にはたらく自然免疫があります。さらに、液性免疫、細胞性免疫といった、さまざまなプレーヤーが存在します。そうしたいくつものしくみが、協調したり、抑制しあったりしながら、デリケートに、かつダイナミックにはたらいているのです。

人類の体には、気が遠くなるほど長い進化のプロセスのなかで、そのように驚くべき複雑なしくみが組み込まれているわけです。しかし、その複雑な免疫のはたらきを、我々はごく単純に実感することができます。

先ほど述べたように、免疫力の高い人はかぜもひきません。しょっちゅうかぜをひいてばかりいる人と、そうでない人は明らかに違うと誰にでもわかります。そして、その違いは免疫力の差だということも明らかです。

免疫は、病気にならない頑健さとして、自他ともに実感できるものです。免疫力の高い人は、ちょっとしたことではかぜをひかず、がんにもなりません。たくさんの患者さんを診てきた印象ですが、全体的に見て免疫力の高そうな人は、がんになることも少ないようです。ですから、がん予防の一環として、免疫を高める生活習慣や考え方などを心がけるのも、あながち無意味ではないと思っています。

ただし、かぜに対する免疫と、がんに対する免疫では「主役」が違うということが重要です。では、さらに理解を深めていきましょう。

けがをしたときの免疫の反応

免疫は、相手に応じて違った武器で闘います。まず、けがをしたときの免疫の反応を考えてみましょう。

細菌などのバクテリアが入ってきたら、白血球のうち「顆粒球」というものが、まず立ち向かいます。傷口から細菌が侵入してくると、組織内の「マスト細胞」などが免疫系に信号を発して救援を呼びかけます。すると、顆粒球が現場に急行し、バクテリアを飲みこんで処理するのです。その闘いの跡が、化膿したときに出るウミです。

次に、やはり白血球の仲間である「マクロファージ」が応援に駆けつけてきます。顆粒球の中でいちばん多い「好中球」と、このマクロファージは、バクテリアを飲みこんで処理するので「食細胞」と呼ばれます。

マクロファージは、飲みこんだバクテリアの情報を、今度は白血球のなかでも「ヘルパーT細胞」というものに伝えます。すると免疫系は、その侵入者に対する「抗体」を準備します。抗体をつくるのは、「B細胞」という白血球の役目です。

病原菌に対する免疫の反応

次に、感染症にかかったとき、かかりそうなときはどうでしょうか。病原細菌が異常に増殖すると、白血球のなかの「樹状細胞」というものが異変を察知し、ヘルパーT細胞やB細胞に情報を伝えます。すると、B細胞が抗体を浴びせて細菌を中和し、身動きできないようにしておいて、ほかの免疫系の仲間に処理させるのです。

同じ感染症でも、ウイルスによる病気はこれと少し違います(かぜはウイルス感染症なので、このパターンです)。

この場合、ウイルスの異常な増殖を察知した樹状細胞は、やはりヘルパーT細胞に信号を発してそれを知らせます。すると、ヘルパーT細胞と兄弟分の「キラーT細胞」という白血球が、ウイルスに感染した細胞を見つけ出し、1つずつ壊していくのです。

自分を攻撃してしまう免疫異常

免疫の重要な働きの1つは、このように、外部から侵入してきた異物(非自己)による危険を取り除くことです。

そのメカニズムに不具合が起こって生じるのが、リウマチをはじめとする膠原病、ぜんそく、アトピー、花粉症などのアレルギー疾患です。関節が変形して痛むリウマチ、激しいせき発作の起こるぜんそく、皮膚炎を繰り返すアトピー。これらは、まったく違う病気のように見えますが、免疫の側からみると、どれも同じ原因で起こっています。

非自己とは、もともと自分の体内にはない物質のことで、そういう異物を免疫は、抗体で攻撃します。ところが、リウマチやアレルギーでは、免疫がなんらかのきっかけで自分の一部を異物と勘違いし、どんどん攻撃してしまうのです。このような病気をまとめて、「自己免疫疾患」といいます。このように、免疫にはいろいろな側面があり、目的によってはたらく細胞も別のものになるわけです。一口に免疫といっても、このように異なるしくみの組み合わさった複合体だということを、理解してください。

免疫の種類と役割の解説図

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